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2025.10.29 09:45

ヤマップが太鼓判! 歩くことに没入できる「カモシカのような不思議な杖」

Issoku-CHOを手に由布岳を登る森達雄

Issoku-CHOを手に由布岳を登る森達雄

「一度使ったら今までのものに戻れない。モノづくりにおいて、本当に強い商品とはこういうもの。まさにこの商品がそうだ」

登山愛好家たちに人気の登山アプリ「YAMAP」を運営するヤマップ代表の春山慶彦がこう唸る「モノ」がある。

ストックのポールの先端が一足長前方にあることから「Issoku-CHO(一足長)」と名付けられた、上の写真のような曲がった杖(ストック)だ。従来の「ストックは直線」という概念を覆したこの商品は、2024年にグッドデザイン賞とヘルスケア産業づくり貢献大賞にて『九州経済連合会会長賞』を受賞。2025年にはOITAゼロイチ(大分県主催ビジネスチャレンジコンテスト)にて最高賞の『大分県知事賞』、さらにForbes JAPAN編集長賞も受賞した。アウトドア業界から医療業界まで、幅広く注目されているIssoku-CHOについて、開発者であるフォレストゼミナール代表の森達雄に話を聞いた。

登山中に拾った枝がヒントに

実際に使用した人からの声を集めて改良を重ねた
実際に使用した人からの声を集めて改良を重ねた

森は長崎大学工学部を卒業後、大手電機メーカーに入社するも、長年の夢を叶えて中学教師に転身。現在は学習塾「フォレストゼミナール」の経営者という経歴を持つ。

Issoku-CHO発案のきっかけは、2021年に妻と出かけた由布岳登山だった。杖代わりになる枝を雑木林の中から適当に手にしたところ、先端が曲がっているものだったという。「これが不思議なほど歩きやすく、使い勝手がよかったのです」。この枝は登山中に折れてしまったものの、森は自宅に持ち帰り、テープで繋いで形状分析を始めた。

「この枝は、先端が一歩分ほど前に曲がっていました。一歩目を踏み出した時に地面をしっかりと捉えるため安定感があります。さらにグリップ位置が下がらず、前傾姿勢にもなりません。最適な姿勢を保ったまま歩行できることで、心地よさを感じることがわかりました」と森は分析結果を語った。

筆者が実際に使って歩いてみると、確かに一歩目の地面を捉えるグリップ力の強さを実感。次の一歩を踏み出す際、湾曲しているため全身の体重をかけやすく、腰への負荷を感じにくい。歩き続けると、直線の杖に比べて腕の大きな上下動がなく、両手の自然な動きに合わせて軽やかかつスピーディに歩けることに気づいた。

身長135cm〜185cmまで適応。組み立て式で収納サイズは50cm。機内持ち込みも可能
身長135cm〜185cmまで適応。組み立て式で収納サイズは50cm。機内持ち込みも可能

森は、この杖を、歩行に不便を感じている多くの人に使ってほしいと考えるが、商品化プロセスの知見がない。そこで商社勤務の実弟にアドバイスを求め、2022年まずは特許取得に挑戦する。特許出願書類を作成する過程で、似た形状のものがあることを知るが、前方への曲げが少なく、杖全体を弾性体として使用する考えもないため、基本的な設計思想が異なることがわかった。ただ、「似たような形状のものがすでに存在することは、Issoku-CHOにも可能性がある」と、自信を深めたと語る。最終的に独自の理論に新規性と進歩性を強調したことで特許を取得する。

続いて委託メーカーを自らリサーチし、長野県にあるスキーポールやステッキなどのアルミ製品の製造を手掛けるキザキにOEM生産を依頼。製作費はクラウドファンディングで募った。実際の製造に向けて必要となるSGマーク(安全基準適合マーク)も「ウォーキングポール」として取得。6月には完成品を出資者に届けた。森は、使用者からの感謝の声に励まされ、大手スポーツメーカーや販売店に売り込みに走り回った。

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文=真下智子

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