“何をすべきなのか”視覚的ビジョンの構築が急務
インタビューを通じて、コリン・アングルの話には一貫性があり、彼の見ているビジョンにブレはない。しかし一方でアングルが話すコンセプトは、解決すべき課題こそ明確にしているものの、どのようなプラットフォームになるかの抽象度が高い。
投資家、消費者の双方にとって、具体的にどのように社会と接する製品になるかを想像しにくいことは確かだろう。筆者自身、彼と直接話をしていなければ、論点を失うところだった。
また、ハードウェアとプラットフォームの両立、つまりコストと品質の最適化も大きな挑戦だ。必要なリソースは計り知れない。
とりわけ、多様な情報を集めるセンシング技術と、それらから集まる記憶を長期的に保持しながら新しい情報を生成する必要があるため、プライバシーと倫理に対する透明性と信頼設計も不可欠となる。
さらには、家庭の中での家族の見守りに関してより深く機能を詰めるならば、医療的なアラート連携を行う上で、どこまで踏み込めるのか。どのような品質の情報を得られるのかなど、適法性の確認も必要だ。
「iRobotで多くの痛い経験をし、たくさんの学びを得ました。目の前には真っ白なキャンバスしかないのは当時と同じ。しかしあの時のとの違いは、私の中にある膨大な学びです。だからこそ、心からワクワクしているんです。次の一歩をどう踏み出すか、考えるだけで興奮します」
生成AIの登場は、さまざまな社会変革をもたらしているが、ロボット技術と結びつくとどうなるだろう。単なる作業をこなす機械から、感情を理解し、関係性を築き、人を思いやる存在へと進化する可能性を持つ。
ただし彼が描こうとしているのは、SF映画に登場するような派手なロボットではない。ペットのように寄り添い、看護師のように気遣い、家族のように長い時間をともに過ごす。そんなロボットが、高齢者の孤独を癒し、日常生活を支え、人々に安心と幸福をもたらす。
それが、アングルが見ている未来だ。
30年前、Roombaという円形の小さなロボットが、誰も想像しなかった市場を切り拓いた。今度は、もっと大きな、もっと深い革命が起こそうとしている。物理的AIという新しいカテゴリーの創造。ケアという概念をロボットに実装すること。そして、機械と人間の関係性を根本から変えること。
真っ白なキャンバスの前に立つビジョナリーは、今、最初の一筆を描き始めようとしている。その絵が完成したとき、私たちの世界は、今とはまったく異なる姿になっているはずだ。より優しく、より思いやりに満ちた、そして何より、孤独という現代の病から解放された世界へ。
小さな住人のことを理解している思いやりを感じるロボットが、どんな家庭の中にも1台ある。あなたは、そんな未来を望むだろうか?
まだ製品の詳細やビジネスモデルは定まっていないというが、次の一歩が楽しみで仕方ない。コリン・アングルの新しい旅の行方に注目していきたい。


