「孤立や孤独を軽減することは、機能として定義できないかもしれません。でも、それは非常に大きな価値です。そして人々は、その苦しみを解決するために、喜んで対価を支払うでしょう」
“感情知性”を持つ製品は未開拓の巨大市場
AIを応用したハードウェア市場は、将来、二つの軸で展開するとアングルは考えている。
縦軸は肉体的器用さや物理的な器用さ、横軸は人間とのインタラクションに必要なEQ(感情知性)だ。
現在、AIロボティクス向け投資で注目されるほとんどが器用さを必要とする一方、EQへの依存度が低い。そして製造業や物流などに集中している。
ヒューマノイドや動物型ロボットへの投資ブームも、主にこの領域を対象としている。しかし、アングルが注目するのは、マップの反対側だ。高いEQを必要とする人間関係領域、つまりケア、生活支援、エンターテインメント、医療などの分野に、巨大な未踏の経済価値が眠っているという。
「実は家庭向けのロボティクスというジャンルには、高い感情知性がなければ解決できないタスクで満ちています。ほとんどの家庭内における問題解決に、高い感情知性が求められる。たくさんのジャンルがありますが、ひとつの分野で成功するだけでも、数100億円規模の市場をすぐに創出できるでしょう」
そこに必要なのは(Roombaの成功が証明したように)、誰もがわかる問題解決の適切なソリューションを提供することだともいう。ゼロから新しい市場を創造できれば「スタートアップでも20〜30%のシェアを獲得することが可能だ」とアングルは話す。
巨大テック企業とは競合しない
アングルはまた、グーグル、アマゾン、アップルといった大手テクノロジー企業とは競合しない、とも話した。
彼らはそれぞれ、検索、Eコマース、デバイスエコシステムに特化している。もちろん、大きな資金力と技術、何よりも人材を備えているが、多様な環境において、横断的に何かの価値を提供するような製品に興味を持っていない。
Familiar Machines & Magicが作ろうとしているのは、人間が対等のパートナーと感じるような人格を持った上で、物理的にも何らかの形を持って問題解決に取り組んでくれるような、家庭内での統合的体験を提供するロボットだ。
こうした未開拓のジャンルでは、最初に動くことで学習曲線を進めることが重要になる。そこで得られたデータ資産を確保し、体験の優位性を確立する。これは、Roombaで経験したものだ。
「新しい領域にAI技術を用いて先行して事業を進めれば、初期データをもとにして体験を継続的に改善できる。これが最大の差別化要因です。また、アップルを除けばハードウェア製品をどのように作るべきか? という課題に、直接関わる企業はありません。そしてロボティクス分野では、その領域こそが成功の鍵なのです」


