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2025.10.29 10:30

ルンバの父が描く「EQを持ち人々をケアするロボット」がある未来

Familiar Machines & MagicのCEO、iRobot共同創設者であるコリン・アングル

しかし、正しいアプローチは逆だ。まず解決すべき問題を定義し、そこから逆算してロボットを設計する。ロボットは道具であり、問題解決こそがゴールなのだ。Roombaは、まさにそうした結晶だった。

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“床をきれいにする”という目的から出発することで、それまでのロボットの発想を捨てることができた。かつてロボット掃除機といえば、人型ロボットが掃除機を押している姿を想像する人がほとんどだった。しかし掃除のためには、家具の下に入り込めなければならない。障害物にも引っかからずに動き回れなければならない。そこから導き出されたのが、あの円形のデザインだった。

第二のステージも、困難なものだ。価値あるプロダクトを作っても、それだけでは成功しない。人々の信頼を勝ち取り、イノベーターやアーリーアダプターの領域を超えて、主流市場へと橋を架けなければならない。いわゆる「キャズムの超越」だ。

Roombaは何度も失敗の危機に瀕した。コストを大幅に上回る価値を提供しているにもかかわらず、ほとんどの人は“きちんと掃除をしてくれる”とは信じてくれなかった。なぜなら、それまでロボット掃除機という製品カテゴリー自体が存在しなかったからだ。市場の不信を乗り越えるため、製品を改良し続け、少しずつ信頼を構築していった。iRobotはこの第二のステージを突破し、新しい産業を創出することに成功した。

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しかし、アングルはその先の第三ステージを見据えていたという。それは『ケアするロボット』を生み出すことだ。

掃除という“タスク”を完了するだけでなく、ユーザーの幸福を目標として行動を調整する。思いやりを持ち、長期的な関係性を築き、その人にとって最適な支援を提供する。それが第三のステージだ。

ロボット掃除機であれば、単に床をきれいにするだけでなく、清掃が不十分だった場所があれば戻ってきて、最後にもうひと仕上げする丁寧さを持つ。住人の安全に配慮し、光熱費を節約し、部屋の中を動き回る中で温度や湿度を感じ取り、最適に保つことで快適性を高める。

そうした「ケア(日本語で言えば“気遣い”だろうか)」の心を持ったロボットが、次の時代を切り拓く。

この第三のステージこそ、アングルが30年前から本当に実現したかったビジョンの核心だった。そして今、AIという革新的な技術の登場によって、ようやくそれが可能になろうとしている。

家庭に向けてロボットの普及には「ロボティクスの3つのステージ」が存在するという
家庭に向けてロボットの普及には「ロボティクスの3つのステージ」が存在するという

感情知性を備える家庭用機器とは?

アングルが新たに「Familiar Machines & Magic」を設立したのは、この三つ目のステージに達するため、高いEQ(日本語で言えば「感情知性」)を備えた家電製品向けのAIプラットフォームの構築だ。

単なるハードウェア製品ではではなく、感情知性を持つ製品を効率的に作り出し、それぞれがネットワークで繋がるための技術基盤を彼は考えている。その上で、ひとつの技術基盤の上で多様なアプリケーションが花開くエコシステムを夢想している。

次ページ > “感情知性をもつロボット”に囲まれた未来

編集=安井克至

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