前述の怪物戦車の場合、その点が問題になった。FPVドローン操縦士たちは弱点を見つけるのに苦労した。彼らはそれまでこのような装甲車両に遭遇したことがなく、びっしり覆った突起物を突き抜けさせようとしてドローンを何機も無駄にした。その残骸は映像にも見える。
戦車は、金属製エクステンションで周囲をすっぽり覆い、ドローンに入り込む余地を与えないようにする方向に進化している。しかし、それでFPVドローンが“ゲームオーバー”になるのかと言えばそうではない。
爆発成形弾という対処策
小型ドローン用弾薬を手がける米企業クラーケン・キネティクス(Kraken Kinetics)のブライアン・デイビス最高経営責任者(CEO)は、ドレッド装甲が有効なのはひとえにFPVドローンが現在搭載している弾頭の種類によると解説する。円錐形の成形炸薬弾または対戦車榴弾(HEAT)として知られるこの種の弾薬は、起爆すると高速で金属の細いジェットを噴出することで効果を発揮する。このジェットは鋼鉄を貫通するほど強力だが、焦点が急速にぼやけてしまうため正確な距離で起爆させる必要がある。
「成形炸薬のジェットはほぼ最適のスタンドオフ(焦点距離)を必要とします」とデイビスは語る。「そうでないと、ジェットは引き延ばされて粒子になり、貫通力を失ってしまいます」
RPG弾頭を装甲から数フィート(1フィート=約0.3メートル)離れたところで起爆させると、装甲貫通力が大幅に低下するのはそのためだ。設計の異なる爆発成形弾(EFP、自己鍛造弾とも)は、それよりももっと長い距離で有効だ。EFPは金属のジェットでなく、空力的に整った形をしたスラグ(塊)を射出する。
「EFPはケージやネット、その他のスタンドオフ防護物を備えた車両に向いている場合が多いです」とデイビスは言う。「EFPは、可変的なスタンドオフを許容する、凝集した飛翔体を形成します」
ウクライナでもEFPはすでに欧州製のボーナス(BONUS)誘導クラスター砲弾のような砲弾に使われている。ボーナスは子弾2個を放出し、それぞれの子弾は地上の装甲車両を探知すると上空数百フィートからEFPを発射し、車両上面の薄い装甲を貫通する。


