場合によっては多数のFPVドローンが必要になることもある。
「20機以上の攻撃というのは、相手の車両が厳重に防護され、アクティブ(能動的)な対抗手段も講じられていた極端なケースでしょうが、単一の装甲目標に複数のFPVドローンが必要になるのは珍しいことではなく、むしろ普通です」(マイケル)
FPVドローンの操縦士にとって最初に問題になるのは、ジャミング(電波妨害)を突破することだ。
「前線の当該方面で鮮明な映像を得るために、その現場に適した装備を用意することが課題です。制御と映像伝送の両方で、適切な周波数で動作するドローンが必要になります」(マイケル)
有線式の光ファイバードローンはジャミングに対する耐性があるものの、それでも気象条件や砲撃、ほかのドローンなどに影響される可能性があり、確実に目標に命中するとは限らない。
戦車を止めるには、履帯(キャタピラ)を狙うのが手っ取り早い方法なのではという意見もあるかもしれないが、マイケルによればそれが望ましい選択肢になることはめったにない。
「干渉や地面効果(編集注:航空機が地面近くを飛行する際に翼の下で空気の流れが変化し、揚力などに影響する現象)によって映像が不鮮明になり、車輪や履帯など特定の箇所を識別するのが難しくなることがあります。加えて、相手は移動目標なので、きわめて高い精度が求められます」とマイケルは説明する。「さらに言えば、車輪や履帯は機動性を奪われないように追加の装甲やゴム製サイドスカートで防護されていることも多い。だから操縦士は普通、より大きく、見えやすい車両上方を狙うわけです。こちらのほうが映像で鮮明に確認でき、有効な損害を与えられる可能性が高いのです」
一般的なFPVドローンが搭載する弾頭は1.8〜3.6kgぐらいで、砲弾やジャベリン対戦車ミサイルの弾頭(約9kg)に比べるとはるかに小型で軽量だ。そのため、FPVドローンは小さすぎて装甲強化型戦車に太刀打ちできないと言う人もいるが、マイケルはそれに異を唱える。
「重要なのは弾頭の大きさよりも精度と貫通力です」とマイケルは言う。「比較的小型の弾頭であっても、技量のある操縦士が装甲の最も薄い箇所を狙って精確に命中させれば、壊滅的な威力を発揮します」


