タイフーンの指揮官マイケルは「これは意図的なトレードオフです」と言う。「攻撃力を犠牲にして生存性を高め、戦車を重装甲の“破城槌”にしたわけです」
火器を専門とする英国の歴史家マイク・モスは、共同運営するウェブサイト「アーマラーズ・ベンチ(The Armourer’s Bench)」の記事で、亀戦車のさまざまな形態や戦術的運用を網羅的にまとめている。当初、亀戦車を止めるには砲撃が必要だったが、ドローン操縦士たちは数カ月のうちにスキルを磨き、FPVドローンで繰り返し攻撃して仕留めるようになった。なかには、拍子抜けするほどあっさり撃破されるケースもあった。
This Ukrainian FPV drone completely obliterates a Russian turtle tank.
— (((Tendar))) (@Tendar) July 30, 2024
Source: https://t.co/BsURJm43pu pic.twitter.com/lLZzr2OOq5
奇抜だが機能的なスパイク装甲
甲羅のような外殻は、多数の突起物(スパイク)に変容してきている。その姿はもはや従来の装甲車両よりも、映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に登場するバザード族の車両や、『キラーカーズ/パリを食べた車』に出てくるトゲ付きフォルクスワーゲン・ビートルを想起させる。
Buzzard Excavator. 😵 #MadMax pic.twitter.com/cKiET4Xf6i
— Charlucci (@Charlucci_18) January 15, 2017
この金属製エクステンションは奇抜だが非常に機能的だ。突っ込んでくるFPVドローンを突き刺したり弾いたり、あるいは起爆させたりすることで、車両本体に被害が及ぶのを防ぐ。7月にはロシア軍のこの種の改造車両として怪物めいた一両が出現し、ウクライナ側は止めるのにFPVドローンが60機ほども必要になったと報告されている。
Ukraine’s 28th Mechanized Brigade repelled a Russian assault near Toretsk. The attack involved a so-called “Tsar Tank” with a mine roller. Around 60 FPV drones were needed to destroy it due to reinforced armor and lack of obvious weak points. Footage shared by DeepState. pic.twitter.com/bA6NcY9uVF
— WarTranslated (@wartranslated) July 11, 2025
ちなみにその数は、語り継がれるうちに「70機超」と誇張され、さらにロシア側ではFPVドローン110機と「バーバ・ヤガー」重爆撃ドローンからの爆弾数発を生き延びたとまで主張されている。
ロシア軍のヤマアラシ形態あるいはドレッド風の追加装甲車両はほかにもいくつか確認されているが、この怪物車両ほど(限定的ではあるが)成功を収めた例はない。ロシア軍のある戦車長は、使用している改修車両についてFPVドローン27機を被弾しても走行し続けたと主張しているが、確認はできない。
撃破は段階を踏む
マイケルは、追加装甲が施されていない戦車でさえ、FPVドローンで撃破するには数機が必要になることが多いと説明する。
「たいていの場合、装甲車両を撃破するにはFPVドローン数機が必要です」と彼は言う。「車両の撃破は通常、段階を踏んで行われます。まず、その重装甲車両を停止させ、それから破壊するのです」


