欧州

2025.10.29 08:00

全身をトゲで覆ったロシア軍の「ヤマアラシ戦車」、ウクライナのドローンは阻止できるか

T-72戦車にトゲ状の対ドローン(無人機)防護物を装備したロシア軍の改造車両。YouTubeで公開された動画から

西側製の戦車はFPVドローンに対してより堅牢なことを証明してきた。車両が破壊されても、乗員の保護に最適化された設計のおかげで乗員は脱出できることが多い。ウクライナ軍のあるレオパルト1戦車はロシア軍のFPVドローン8機の攻撃に耐え、さらに3機の攻撃でようやく撃破された。乗員は脱出できたもようだ。また、米国から供与されたエイブラムス戦車の一両は、6機かそこらのFPVドローンの攻撃を受けてようやく停止した。乗員は無事脱出している。

advertisement

このエイブラムスの車長は「(ドローンは)エンジンを直撃したようです」とウクライナメディアに語っている。「ですが、わたしたちが中にいた間、十分な時間があったのに、(ドローンは)砲塔も車体も貫通できませんでした」

この戦車もはやり追加装甲やFPVドローン捕捉用のルーフネットを装備していた。

advertisement

これらの事例は珍しいものではない。英王立防衛安全保障研究所(RUSI)は最近の報告書で「適切な改修を施せば、装甲車両はFPVドローン10〜15機の被弾に耐え得る。損傷は受けるものの修理可能である」と説明している。

(なお、ここで耐え「得る」という表現に留意。報道でも「生存者バイアス」がはたらくため、映像でよく見られるような最初のFPVドローン数機で撃破された事例は報じられない可能性がある。)

そうした改修では通常、FPVドローンの成形炸薬弾頭の威力を減殺する爆発反応装甲タイルが車両の広い範囲に取り付けられる。爆発反応装甲タイルは、同じ箇所に複数回命中させなければ貫通できず、戦車が生き延びた場合、交換するのも容易だ。

ロシア軍はさらに2024年、戦車などを甲羅のような大きな追加装甲で覆った俗称「亀戦車」(「小屋」や「移動式納屋」などとも呼ばれる)を投入し始めた。この構成では砲塔の旋回が犠牲にされており、亀戦車は主に啓開車両として、地雷をかき出しながら突撃を先導する姿が目撃されてきた。亀戦車の「甲羅」は砲塔の回転を不可能にし、視界も狭める半面、FPVドローンによる攻撃の衝撃を吸収する。亀戦車では、爆発のリスクを避けるため搭載弾薬も減らされている。

次ページ > 奇抜だが実際に役に立つ「スパイク装甲」

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事