食と技術は太古から切っても切り離せないものだが、特に2015年ごろから国連を中心としてSDGsの動きが活発化し、気候変動への危機感が募るとともに、代替プロテインや植物工場、フードロス削減など、フードテックスタートアップが台頭してきた。
また、デジタル技術の発達で、フードデリバリーやレストランでのモバイルオーダー、調理家電も急成長した。食料安全保障の観点から、世界では公的資金の活用も活発化し、欧米をはじめ、シンガポールやカナダ、ブラジルなど世界の各地でフードテックのエコシステムが構築されている。
2022年以降のフードテック投資のVC投資は減速しているが、企業による開発投資、公的な資金投下(特定技術やクラスターへの支援)が活発化しており、食の進化は着実に進んでいる。
日本においても、完全栄養食のベースフードや、外食産業の人材不足を補う調理ロボット開発のTechMagic、微細藻類から新調味料や魚餌を開発するAlgaleX、次世代の品種改良技術をもつリージョナルフィッシュ等、最先端技術をもつベンチャーも出てきている。
高齢化や災害リスクなどの社会課題を抱える一方で、日本は発酵、大豆、海藻といった独自の食文化と、緻密な素材開発・加工技術を有し、海外からの期待も年々高まり、世界のエコシステムの中核となりうるチャンスにある。
だが強みは生かさなければ失われる。今、日本の技術は模倣・流出のリスクに晒されており、速度や連携力で他国に先を越される可能性もある。全国に技術力の高い中小企業や職人が多く存在するが、後継者難や資本力不足により、価値ある文化や技術がひそかに消えつつある。
鍵は“共創”にある。業種を超えた組織間連携、価値の可視化と再定義、情熱ある人材の育成が不可欠だ。食の共創拠点も生まれつつある。&mog(三井不動産)、GIC Tokyo(東京建物)、Foodα(UR等)等の拠点が相次いで都内に立ち上がり、さらに京都、北海道、四国、東三河、静岡でも新たな食のエコシステムが立ち上がりつつある。まさに、フードテックの「第2ウェーブ」がきているとも言えるだろう。
食は単なるビジネスではなく、社会と人間の在り方そのもの。日本の食の未来を共創するために、最先端技術の活用も視野に入れ、今こそ多様な個がつながり、世界に向けて“つくりたい未来”を提示する時である。
田中宏隆◎UnlocX代表取締役CEO/SKS JAPAN Founder。パナソニック、マッキンゼーを経て2017年シグマクシスに参画し、グローバルフードテックサミット「SKS JAPAN」を立ち上げ。食のエコシステムづくりを目指し、23年にUnlocX創設。



