食&酒

2025.11.11 16:45

日本発の調味料といちごが、ニューヨークで売れているワケ

Cabi共同創業者の宮城エリ(写真左)と野村美紀(同右)

Cabi共同創業者の宮城エリ(写真左)と野村美紀(同右)

「食を通じて、いのちを考える」を掲げる大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「EARTH MART」と Forbes JAPANが連動し、食の未来を輝かせる25人を選出した。生産者、料理人、起業家、研究者……。本誌 11月号では、豊かな未来をつくる多様なプレイヤーを紹介する。


日本発・NY拠点、発酵調味料をアメリカの日常に

宮城エリ 野村美紀|CABI 共同創業者

日本の食、日本の味への需要が世界的に高まるなか、「それを家庭で楽しめるかたちで提案する」のが、日本の発酵技術や素材を生かした調味料ブランド、CABIだ。2022年にNYで創業し、3年足らずでホールフーズ・マーケットでの販売を実現。同時に発売した新商品「スパイシーマヨ」は想定の5倍の売れ行きをみせる。

「ターゲットであるプレミアムマス層に届き、また、日本でいう醤油のようなメインカテゴリーで良い結果を得られてうれしい」と共同創業者の野村美紀。

そのマヨを起点にセールスを拡大していくフェーズに入った今、要となる物流やマーケティングの人材、フードサイエンティストを採用して体制を強化。NY拠点のブランドとして、地元の高感度なベーグル店やサンドイッチ店とのコラボレーションにも力を入れる。

そうした評判は日本にも届き、国内の食品メーカーとの商談も増えた。「日本に眠る技術や伝統を使って、驚かれるような商品をつくっていけたら」と野村。「日米の架け橋に」という創業の原点にある思いが実現しつつある。


宮城エリ、野村美紀◎2022年に発酵調味料ブランド「CABI」をNYで創業。野村が主にビジネスサイドを、宮城がクリエイティブサイドを担当。ホールフーズ・マーケットほか米国の500超の小売店で展開する。

日本の「おいしい」をアメリカで再現

古賀大貴|Oishii Farm 共同創業者兼CEO

2050年までに日本の農業人口は8割減少すると予測される。食糧危機回避のためには供給増のための変革が求められるが、「それは今の農業の延長線上にはない。まったく違うかたちで再構築する必要がある」とOishii Farmを率いる古賀大貴はいう。ここでいう“まったく違うかたち” は、土壌や気候、労働力不足にも左右されない、植物工場技術を用いたサステナブルな農業だ。
 
17年に米国ニュージャージー州で創業した同社は、ハチによる自然受粉を用い、最も難しいとされるいちごの安定量産に成功。サッカーコート3面分以上の“メガファーム”を起点に日本の高品質のいちごを展開し、多くのミシュラン星付きレストランからも好評を得る。

日本が戦後に追求 してきたグリーンハウス農業と工業技術のかけ合わせで「年中どこでも良いものを手ごろな価格で手にできる社会を実現し、世界中のスーパーにOishii Farmの棚がある未来を目指したい」と古賀。25年には都内に研究開発施設の開設も発表。世界展開に向けた基盤構築を進めていく。


古賀大貴◎1986年、東京都生まれ。慶應義塾大学を卒業後、コンサルティングファームを経て、UC バークレーでMBA取得。在学中の2016年にOishii Farmを設立。日本の品質と技術を基盤とした新たな世界産業の創出に挑戦する。

文=鈴木奈央 写真=福田直記

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