夏は暑いほど物が売れると言われてきたが、今年の異常な暑さでもその原則は維持されたのだろうか。帝国データバンクの分析では、「猛暑需要」に二極化の傾向が見られるとのことだ。
今年、183社の上場企業が猛暑の業績への影響を公表した。そのうち114社が業績や新商品開発などでプラスの効果があったとしている。昨年、猛暑の影響を公表した上場企業102社と比較すると、マイナスの影響の割合はどちらも約38パーセントで変わらず、業績がプラスになった割合は、昨年が約56パーセント、今年が約46パーセントと、むしろ10ポイントほど減少している。

しかし、新製品や新サービスの開発などの企業活動にプラスの影響があった企業が10ポイントほど増え、それらを合計すると、プラスの影響があった企業の割合は昨年が約61.76パーセント、今年が約62.2パーセントとわずかに増えた。
プラスになった企業でもっとも多いのが小売業、次に製造業だった。小売業では、夏物衣料、冷感商品、エアコン、ハンディファンなどの猛暑対策グッズの需要が急増し、清涼飲料水、アイスクリームも売り上げを伸ばした。また、大手ショッピングセンターやスーパーなどの涼しい屋内施設が「避暑」需要を取り込んで集客力を高めたということだ。さらに、アミューズメント施設の稼働率が上昇し、出店テナントの販売が増えるという好循環も生まれた。
製造業は、エアコン関連の部材、ボディケア製品、飲料水、耐熱・遮光製品などが好調だった。それにともない、卸売業、サービス業も伸びた。

ところがマイナスの企業でも、もっとも多かったのが小売業で、昨年から56パーセントほど増えている。飲食店などの路面店を展開する企業が猛暑による客足の減少で振るわず、アウトドア、ガーデニング関連の商材も苦戦したためだ。マイナスとなった製造業も昨年から増加している。ココアやスムージーなどの濃厚ドリンクは清涼飲料水とは対照的に売り上げが落ち、原材料費の高騰のあおりを受けた食料品も苦戦した。
このように、同じ業種でも猛暑による影響は明暗が分かれた。今年好調だった企業も、家計の出費が増えたぶん、秋物需要にその反動が出る恐れがあると帝国データバンクは指摘している。「猛暑が経済活動に与える影響は気温上昇に連動して一層大きくなる」とのことで、企業の戦略や取扱商品によってはプラスとマイナスの二極化が進む可能性があるということだ。



