ウクライナの無人機(ドローン)が26日、ロシアの首都モスクワを攻撃し、ロシア大統領府(クレムリン)外に展開した移動式防空システムを捉えた衝撃的な映像が公開された。モスクワに対する無人機攻撃は過去にも複数回発生しているが、今回は性質が異なる。ロシア軍司令部は現在、持続的な攻撃から首都を守るため、防衛部隊を動員している。
モスクワに対する無人機の包囲攻撃が本格的に始まったようだ。これはウクライナ軍の戦略にとって何を意味するのだろうか?
激化するウクライナ軍の無人機攻撃
モスクワのセルゲイ・ソビャニン市長は、26~27日にかけての夜間にロシア軍が計193機の無人機を迎撃したと発表した。ロシア当局は常に、侵入する無人機の100%が撃墜されており、地上の被害はすべて「落下した破片」によるものだと主張している。ところが、損傷のない無人機がロシアの石油精製施設を直撃する様子が撮影されても、同様の説明がなされている。
ウクライナ侵攻の初期段階から、ロシアの防空システムには欠陥が多く、小型無人機への対処には不向きであることが明らかだった。理論上、モスクワは世界でも有数の防衛都市であり、迎撃ミサイルを収容する二重のサイロが配置されている。しかし、これらは弾道ミサイルを阻止できるものの、ウクライナ軍が毎夜発射する「リュティー」や「ファイアポイントFP1」のような小型で低速の無人機を検知、追跡、迎撃するようには設計されていない。
2023年5月に最初の8機の無人機がモスクワを攻撃すると、戦争が自国の領土には及ばないと確信していたモスクワ市民に衝撃が走った。これは深刻な攻撃というよりは警告の意味合いが強かった。実際、その後1年以上経った24年8月、ロシアが11機の無人機を撃墜するまで、ウクライナ軍は他の標的に注力していた。その後、無人機攻撃は頻繁になり、今年は3月、5月、7月、9月と2カ月おきに発生している。3月の襲撃では約91機の無人機が投入された。
ウクライナは現在、無人機の製造を拡大しており、今年中に3万機の長距離攻撃型無人機を製造する目標を掲げている。製造元のファイアポイントは既に自社工場で1日100機のFP1無人機を製造しており、他にも多くの企業がこの計画に関与している。HIサットンは24種類の無人機を一覧に上げているが、これらは確認されている機種に過ぎない。
一方、技術的問題による遅延を経て、ウクライナ軍の巡航ミサイル「フラミンゴ」は製造段階に入り、数週間以内の納入が見込まれている。また、ウクライナが供与を求める米国の巡航ミサイル「トマホーク」がロシアに向けて飛来する可能性すらある。
皇帝プーチンを守るために
ロシアは広大な国土を持ち、数多くの脆弱(ぜいじゃく)な標的を抱えている。ここ数週間のウクライナ軍による無人機攻撃はロシアの石油精製所を集中的に狙い、多数を炎上させ大規模な損害をもたらした。これにより供給が途絶え、ガソリンスタンドが枯渇する燃料危機がロシア全土に広がっている。
ロシア軍司令部は先週、石油精製所などの施設を無人機攻撃から防衛するため、予備役兵を召集すると発表した。この措置はウクライナでの戦線から現役兵を引き抜くのを防ぐためだが、果たしてどの程度の防御効果が得られるのかは不明だ。レーダーや対空砲、防空網との統合通信システムといった専門的な防空装備がない限り、予備役兵が無人機らしき物体を目撃するたびに自動小銃のカラシニコフを空に向けて撃つだけの対策に終わる可能性もある。



