そうした製品を見ることは、それらを使用していた10代のころに人々の心を引き戻し、当時の人気俳優たちへの憧れや、そのころを懐かしむ気持ち、肯定的な記憶を呼び起こす(なぜか私たちの脳は、それほど楽しくなかったことは、あまりよく覚えていないようだ)。
一方、ノスタルジアを巧みに利用して人気を得ているものには、多くのフィクション作品なども含まれる。ジェニー・ハンの小説が原作のAmazonプライムビデオのドラマ、『私たちの青い夏』も、10代の恋愛を取り上げたものだ。客観的に見て、そう珍しい内容ではない。だが、最終シーズンの視聴者数は(配信開始から1週間で)250万人を超えた。米国では文化的現象にもなっている。
視聴者は主に25歳以上の女性であり、特に30~40代が多いという。コンテンツクリエーターのエマ・ライマーは英紙ガーディアンに、このドラマについて次のように語っている。
「単なる10代の恋愛ドラマではありません。私たちの初恋や失恋、希望と可能性に満ちた夏を思い出させてくれるものです」
「1週間を置いて次のエピソードが公開されていくことから、グループチャットではその先の予想や見終わった後の報告会を通じて、連帯感や懐かしい気持ちが高まります。1990年代や2000年代に、大好きな番組を見ていたころを思い出します」
ノスタルジアはメディアや広告において、うまく作り出すことができれば効果的なものになる。人々の間に共感を生み、何かを感じさせ、なじみのある共通の記憶を共有することによって、社会的なつながりを生み出すことができるためだ。製品のローンチやブランドの再生にも、同じことが言えるだろう。
ただ、これらに関しては、「かつての人気をベースにすれば、すべてのブランドが再び親しみを感じてもられるものになるのかどうか」という疑問も生じる。その答えは、必ずしもそうとは言えない、ということだ。
真の共感を得るためには、ノスタルジアの魅力と現代における関連性の両方がそろっていなければならない。目的は過去を振り返ること、過去に立ち戻ることではなく、過去の肯定的な記憶を、現在の生活に組み込むことだ。いつでも戻りたくなる過去を形作った何かを楽しむことができると同時に、現在のものでなくてはならない。


