トランプ米大統領のアジア外交が始まった。26日からクアラルンプールで東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議などに出席。27日から2泊3日で訪日し、28日には高市早苗首相と対面では初めての日米首脳会談などを行った。29日からは訪韓し、中国や韓国などとの首脳会談に臨む。
日本外務省の元幹部は「トランプ氏の個人的な欲望を満たすためだけに組み立てられた外遊だ」と語る。トランプ氏がASEAN関連会議に出席するのは8年ぶりだが、会議には関心がない。では、なぜクアラルンプールを訪問するのか。関係消息筋によれば、トランプ氏は会議出席の前提条件として、26日に行われたカンボジアとタイの和平協定調印式の開催と自身の出席を求めたという。さらに、トランプ氏は「式典に中国が参加しないこと」も条件に加えた。
カンボジアとタイは7月に停戦したが、トランプ氏は9月の国連総会での演説で、「自身が止めた7つの戦争」の一つとして挙げていた。ノーベル平和賞の受賞への野心に燃えるトランプ氏は式典出席を要求する代わり、カンボジアとタイ両国に対して相互関税の引き下げも提案したという。実際、カンボジアに課す相互関税は当初49%だったが、36%に引き下げた後、7月31日に署名した米大統領令で19%まで下がった。タイに対する相互関税も36%だったが、やはり7月31日の大統領令で19%に引き下げた。消息筋は「カンボジアとタイにしてみれば、税率を下げてくれるなら、式典でトランプ氏に花を持たせることくらい、お安い御用だっただろう」と話す。
トランプ氏は韓国訪問中に北朝鮮の金正恩総書記との面会にも意欲を示している。これも、朝鮮戦争の平和協定を実現して、「自身が止めた戦争」と主張する7つの戦争を、パレスチナ自治区ガザでの戦争と朝鮮戦争を加えた「9つ」にしたい思惑が働いている。北朝鮮の核保有の是非など知ったことではない。
では、トランプ氏はなぜ、日本を訪れるのか。別の日本外務省の元幹部は「習近平(中国国家主席)に対する交渉ポジションを上げるためだ」と語る。トランプ氏は今回のアジア外交のハイライトを30日に行う習近平氏との米中首脳会談に置いている。トランプ氏はそこで、レアアースの輸出規制や高関税の掛け合いといった米中経済紛争に決着をつけ、市場に安心感をもたらし、自身の業績としたい思惑がある。



