すでにトランプ氏は10月20日、ワシントンで行われた米豪首脳会談で、レアアースの共同開発や、米英豪3カ国による安全保障の枠組みAUKUSの推進などで合意した。関係消息筋は「レアアースの共同開発がすぐに成果を見出すわけでもないし、トランプ氏がAUKUSに関心があるわけでもない」と指摘する。日本外務省幹部も米豪首脳合意について「米中首脳会談に向け、習近平氏に向けられた牽制球と考えるべきだろう」と語る。トランプ氏は訪日中、高市首相とともに原子力空母ジョージ・ワシントンに乗艦するが、これも中国に対する戦略的メッセージの一つとみるべきだろう。
こうした「俺様外交」を展開するトランプ氏に対し、高市首相は最大限に持ち上げる対応を取った。首脳会談冒頭で、タイとカンボジアの和平を仲介したトランプ氏を称え、ガザでの停戦におけるトランプ氏の役割を「歴史的偉業」と表現してみせた。レビット米大統領報道官は28日、高市氏がトランプ氏にノーベル平和賞に推薦する考えを伝えたと明らかにした。防衛費を更に増やす考えも伝えたという。
高市氏と日本政府が取った戦略は、トランプ氏の思惑を読んだうえでの対応で、日米同盟を強化するという目的からは一定の評価を受けるべきものだろう。ただ、「日本も米国と協力して中国と戦います」という回答だけで問題は解決するのか。「そうとも言い切れない」と日本政府の当局者は語る。「我々が、米国と中国のやり取りのすべてを把握しているわけではない。米政府当局者としては、トランプ氏に恥をかかせられない。当然、米中首脳会談前に落としどころを見つけようと、中国側と水面下でやり取りしているはずだ」(同)。すでに、米側はベッセント財務長官やルビオ国務長官が中国側と会談を重ね、30日の米中首脳会談を成功に導くよう段取りをつけている。
米中間で落としどころが見つからないうちは、高市氏が、日米首脳会談で見せたトリセツで問題がないだろう。しかし、米中が今後「握った」状態になれば、トランプ氏の態度が急変するかもしれない。上述の当局者は「トランプ氏の対中方針について、最初から決めつけて臨むのは危険だ。米中が合意すれば、台湾有事への不介入など、日本は梯子を外されるかもしれない」とも語る。日本は米国と協力しながら、中国とのパイプも築いていく必要がある。
日米両首脳は28日、日米同盟の強化で一致した。トランプ氏は首脳会談で「あなた(高市氏)は偉大な首相の1人になるだろう」と語った。高市氏は、台湾や朝鮮半島での不測の事態にも念頭に置きながら、トランプ氏が自らの発言に最後まで責任を持つよう、努力を重ねていく姿勢が求められる。


