起業家

2025.10.30 13:00

「耳栓に投資なんて正気か?」と言われた──売上337億円の「Loop」を生んだ起業家コンビ

Loopのイヤープラグ(Shutterstock .com)

「静寂が存在しなくなった」、創業者2人を襲った聴覚ダメージが原点

ブリュッセル郊外で育ったオとボデウェスが出会ったのは13歳のときだ。その後、2人はそれぞれ商業工学と土木工学を学び、オはのちにエネルギー系スタートアップを創業し、ボデウェスはマイクロソフトに就職した。

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だが、10年以上にわたってクラブやコンサートで大音量に接した結果、彼らは次第に聴覚の異常に苦しむようになった。「私の場合、耳の奥で常にブーンという音が鳴っている。“静寂”というものが存在しなくなった」とオは話す。「私たちは、聴覚のダメージを感じながらも、外出したり、バイクに乗ったりしたかった。そのため、聴覚保護のためのプロダクトを作ることにした」と続ける。

既存品に満足できず開発、快適さや見た目の良さを追求し試作

2人は、安価なスポンジ製から数百ドルの高級オーダーメイド品まで、あらゆる耳栓を試したものの、「快適で、手頃で、そして何より見た目がいいものが存在しなかった」とオは振り返る。そこで2015年、2人はそれぞれ約4万ドルを出資して、ナイトライフ向けに特化した耳栓の開発に乗り出した。3Dプリンターでさまざまな形状を試し、サウンドを和らげつつ心地よく変化させるフィルターの組み合わせを探りながら、改良を重ねていった。

その翌年、2人はブリュッセル拠点のアクセラレーターに採択され、仕事を辞めてLoopの改良に専念した。そこから2年間、製品の完成度を高めることに集中し、事業拡大のための資金調達に動いた。2018年半ばまでに、友人や家族から約6万ドルを集め、その年のうちに4500個を販売したという。オは当時を振り返り、「周囲の人には『耳栓みたいな退屈なものに投資するなんて正気か?』と言われた」と笑う。

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2019年になるとLoopは生産体制を拡大した。製造方法を量産には不向きな3Dプリント方式から射出成形に切り替えた結果、約100万ドルの売上を達成した。

コロナ禍で売上8割減、苦境で下した2つの重要な決断

しかし、2020年に入って数カ月後、コロナ禍によるロックダウンでLoopの成長はほぼ停止した。「数週間のうちに売上が80%も落ち込んだ」とオは振り返る。当時、LoopはオンラインとCVSのような小売店の両方で販売を行っており、売上の約半分は店舗での販売だった。

「そのとき、私たちは2つの重要な決断を下した」とオは言う。1つ目は、イヤープラグを別の用途にも応用できるようにすることだ。「私たちは、多くの人が耳を保護するためではなく、“快適さ”のために製品を使っていることに気づいた。つまり、さまざまなノイズの中で、自分で音をコントロールできることによる安心感だ」。

2つ目の決断は、販売ルートをD2Cによる直販に切り替えることだった。小売販売は特に2019年の売上拡大に貢献したが、パンデミック下では急減した。また直販に集中したことで、別のメリットもあった。オンライン販売やSNSのレビューを通じて、消費者からより多く、そして質の高いフィードバックを得られるようになったのだ。

2020年7月、Loopはベルギーの投資会社アキレスから100万ドルの出資を受け、直販体制への転換を加速。その数カ月後には、集中・旅行・睡眠に特化した第2の製品を発表した。結果として、その年の売上は120万ドルに達した。「そこから先は、本当に驚くほどのスピードで成長が始まった」とオは明かす。

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翻訳=上田裕資

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