起業家

2025.11.07 12:30

AI農業に茶の再編集、大地の力で食の未来を変える4人の起業家

(c)タネト

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「食を通じて、いのちを考える」を掲げる大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「EARTH MART」と Forbes JAPANが連動し、食の未来を輝かせる25人を選出した。生産者、料理人、起業家、研究者……。本誌 11月号では、豊かな未来をつくる多様なプレイヤーを紹介する。


農業現場の改革で気候変動に挑む

加藤百合子|エムスクエア・ラボ代表取締役CEO

courtesy of m2labo
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農業の担い手減少という課題解決のため、屋外作業用モビリティの開発や農産物の流通プラットフォーム提供に取り組むエムスクエア・ラボ。代表の加藤百合子は「おいしい食事は多様な食材があってこそ。それを成り立たせていけるかということに強い危機感があります」と語る。

気候変動によって食卓の“当たり前”が揺らぐなかで、加藤はAIやIoTを活用した仕組みこそが持続可能性を高めると考える。「技術を使えば、どこでも食料を生産できるようにる」。その活動はグローバルにも展開しており、すでにインドでは日本の農業技術を導入し、現地に適したシステムを実証している。

加藤百合子◎東京大学農学部卒、英国クランフィールド大学で精密農業分野にて修士取得。2009年静岡県菊川市でエムスクエア・ラボ創業。AI・IoT活用の精密農業や「やさいバス」で流通改革に取り組む。スズキ財団理事。

日本文化と茶の再編集で世界をつなぐ

岩本 涼|TeaRoom代表

courtesy of TeaRoom
courtesy of TeaRoom

「品質だけで勝てる時代は終わり、文化との組み合わせが鍵になる」。関税やブロック経済が、世界のフラット化への逆行の傾向を示す現代において、今後は地域性が交差する世界のありかたが理想だと語る岩本涼は、日本茶を軸に地域文化を再編集し、国内外に新たな価値を示す道を模索。茶会のフォーマットを用いて顧客体験や研修をデザインするなど、茶を商品から体験に変容させようと取り組む。

目指しているのは、文化を通じて分断を超え、一杯のお茶が、違いを超えて今を共有する場になること。思想と文脈を伴った茶は「なぜその国から買うのか」という動機とともに世界をつなぐ。

岩本 涼◎幼少期に茶道を始め、2018年早稲田大学在学中にTeaRoomを創業。静岡本山地域の製茶工場を継承し、生産と流通を自ら担いながら、茶の文化や哲学を現代に再編集。国内外へ日本茶の新たな可能性を発信。

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文=青山鼓

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