昆虫食と聞くだけで生理的に拒否反応を示す人もいるだろうが、それが「超悪玉脂質の血中濃度を顕著に低下」させて脂質異常症を改善するとなると、ちょっと興味をそそられるのではないか。
北里大学獣医学部動物資源科学科の栄養生理学研究室の落合優准教授らによる研究グループは、以前の研究で食用昆虫トノサマバッタの粉末には脂質代謝を改善する可能性があることを発表しているが、今回、ラットを使った実験でその効果の実証に成功した。
研究グループは、脂質異常症を起こさせたラットにトノサマバッタ粉末を与えたところ、肝臓と血中の脂質代謝関連指標が全面的に改善された。また、とくにオスのラットでは、腸内細菌のアッカマンシア属の占有率が増えて腸内細菌叢の改善も見られたという。
この効果は、機能性脂質のオメガ3脂肪酸が結合したさまざまなリン脂質種や植物ステロール類の含有率の高さによるもの。血液と肝臓の間での脂質代謝の中心的な存在であるリポタンパク質代謝、過剰な脂質の消化管吸収、吸収された脂質の糞便排泄を「非常に有効に調整する作用がある」とのことだ。
この研究の目的は、食用昆虫が代替タンパク質資源と脂質代謝改善剤の両方の役割を果たす可能性を検討することにある。その面で、大いに期待される結果となった。これがどのような形で実用化され世間に現れるのかは不明だが、およそ460万人とされる脂質異常症に悩むみなさんは、昆虫食を選ぶか、虫を食べるぐらいなら食事制限をして運動をするか、近い将来、ギリギリの選択を迫られることになるかもしれない。



