11月4日に投開票が行われる米ニューヨーク市長選の最有力候補とされる急進左派の民主党候補、ゾーラン・マムダニ(34)は、「ビリオネアは存在すべきでない」と主張している。その発言に反発した富豪が、彼の当選を防ごうと自らの財力を用いている。
NY市長選、マムダニがクオモを引き離しリード
「民主社会主義者」のニューヨーク州議会議員マムダニは、勢いに乗っている。NY市長選に向けた世論調査で彼の支持率は、前州知事のアンドリュー・クオモやトーク番組司会者で共和党候補のカーティス・スリワを大きく引き離し、リードを保っている。だがその一方で彼は、政財界の大物を敵に回している。
「ビル・アックマンやロナルド・ローダーのようなビリオネアは、私たちが“脅威そのもの”だと言って、数百万ドル(数億円)をこの選挙に投じている。私は認めよう。彼らの言うとおりだ」とマムダニは13日の集会で語った。
ヘッジファンド運用者のアックマンは、10月22日の時点でマムダニ陣営に反対する政治団体に175万ドル(約2億7000万円。1ドル=152円換算)を拠出しており、化粧品大手エスティローダーの後継者ローダーも75万ドル(約1億1000万円)を寄付している。しかしマムダニが名指ししたこの2人だけが、彼の当選阻止に動いているわけではない。
全米各地のビリオネア26人、マムダニ阻止へ約34億円を投入
フォーブスの分析によれば、全米各地のビリオネア26人、またその一族の関係者が、それぞれ少なくとも10万ドル(約1500万円)を投じ、無所属で出馬するクオモやマムダニ以外の候補を支援している。これらビリオネアの寄付総額は2200万ドル(約34億円)を超え、ニューヨーク市民のもとには反マムダニのメッセージがテレビや郵便を通じて洪水のように押し寄せている。
これらの寄付金の半分以上の約1360万ドル(約21億円)は、マムダニが6月24日の民主党予備選で勝利する前に拠出されていた。そのうち過半を占めたのが、元ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグからの寄付で、クオモを支持する彼は6月に「フィックス・ザ・シティ」と呼ばれる団体に830万ドル(約13億円)を注ぎ込んだ(その後、ブルームバーグとマムダニは「友好的な」意見交換を行ったと報じられた)。
他にも、リベラル寄りの大口寄付者であるネットフリックス共同創業者リード・ヘイスティングス、メディア事業家バリー・ディラーなどが、予備選前にそれぞれ25万ドル(約3800万円)をフィックス・ザ・シティに送っていた。
一方で、保守派やトランプ支持者の一部もこの選挙戦に加わっている。カジノ王スティーブ・ウィンは10月に50万ドル(約7600万円)を寄付し、石油業界の大物ジョン・ヘスは5月に最初の小切手を切って以来、これまでに合計100万ドル(約1億5000万円)をマムダニ陣営に対抗するために投じている。
マムダニが掲げる、法人税や所得税の引き上げ、ポピュリズム的政策
3期目を務めるニューヨーク州議会議員のマムダニは、左派ポピュリズム的な政策構想を描いている。「私は、今のような格差が広がる時代に、ビリオネアが存在すべきだとは思わない。あまりにも金額が大きすぎる」と彼は6月のNBCニュースの取材に語っていた。ただし最近、彼はビジネス界のリーダーたちとの面談を重ね、支持を取りつけるか、少なくとも彼らの不安を和らげようとしているとみられている。
彼は市長選の公約に「ビリオネアの追放」を含めていないものの、市の家賃規制の対象となる住宅の賃料の凍結、市営バスの無料化、保育の無償化を掲げている。その財源は、所得税の最高税率の2ポイント引き上げや、法人税率を現行の7.25%から11.5%へ引き上げることでまかなう構想だ。



