フランスのファストファッション罰則法案は大量消費社会を変えるのか?

イタリア・ミラノで開催された中国発の衣料品ネット通販「SHEIN(シーイン)」のファッションショー。2025年10月16日撮影(Rosdiana Ciaravolo/Getty Images)

この法案はなぜ重要なのか?

これは、政府が超ファストファッションの持続不可能な経済構造に真正面から取り組む、これまでで最も直接的な事例の1つだ。

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ファッション産業の炭素排出量は世界全体の約10%を占め、年間9000万トンを超える繊維廃棄物を生み出している。それにもかかわらず、廃棄物の再利用は遅々として進んでおらず、安価で短命な衣類の膨大な量に対応しきれていない。

こうした状況下で、フランスの動きは現実的かつ象徴的な一線を引くものだ。業界の自主的な取り組みや消費者からの圧力だけでは不十分であることを認めた上で、規制こそが解決策の一部でなければならないことを示している。

これは特に、世界のファッションの中心地の1つであるフランスから発せられた言葉として印象的だ。ファッション業界で文化的にも経済的にも権力を築いてきた同国が、今やその行き過ぎを規制しようとしていることは意義深い。

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市場は一夜にして変わるわけではない

では、なぜこれほど時間がかかったのか? ファストファッション業界の闇は過去20年間、公然の秘密だった。ファッションブランドは「個人のスタイル」という幻想を売り込む一方で、実際には消費者に「新しさの無限ループ」を期待させるよう仕向けてきた。たった数百円のワンピースを注文すれば、わずか数日で自宅に届く。

既存のファッション業界の規制は、この流れに対応できる構造ではなかった。特に超ファストファッションは、従来の監視では追いつけないデジタル優先のサプライチェーン(供給網)に依存している。企業による強力なロビー活動や、消費者が安価な衣服を好む事実も相まって、誰も積極的に変化を起こそうとはしなかった。持続可能性への段階的な取り組みや小規模なカプセルコレクション、環境・社会・企業統治(ESG)マーケティングなどの試みも行われているが、いずれも業界の炭素排出量や廃棄物を大幅に削減させるには至っていない。フランスの法案は市場が自力で修正しない部分を規制しようとする試みだ。

だが、率直に言えば、フランスの法案は第一歩であって最終的な解決策ではない。同法案は自主的な取り組みでは不十分だという認識の表れだ。つまり、従来通りの事業にコストがかからない限り、企業が製造を減速させたりサプライチェーンを浄化したりしないという認識だ。とはいえ、罰則は商品1点当たり数ユーロ(数百円)と控えめで、執行については多くの議論が交わされることになるだろう。

また、規制にも限界がある。わずかな値上げや販売制限では、消費者が何十年もかけて培ってきた「より多く、より安く、より速く」を求める習慣を廃止することはできない。過剰消費はビジネスの問題であると同時に文化の問題なのだ。これは中国や低価格ファッションだけの問題ではない。高級ブランドでさえ、人工的に希少価値を生み出すため、複数の季節ラインを展開している。

標的にされる企業とされない企業

それではなぜ、シーイン、テム、アリエクスプレスといった中国企業が悪者扱いされる一方で、欧米の巨大企業は直接的な監視を免れているのだろうか?

欧米のブランドが海外の安価な労働力の搾取によって同様に富を築いてきたとしても、問題を外部からの脅威として捉えるのはいかにも都合が良い。多くのファストファッション企業が、低賃金の製造拠点と容赦ない製造過程に依存している。規制が信頼性を得るには、新規参入の最も目立つ標的だけでなく、すべての企業に対して厳しい問いを突きつけるべきだ。

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翻訳・編集=安藤清香

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