フランスのファストファッション罰則法案は大量消費社会を変えるのか?

イタリア・ミラノで開催された中国発の衣料品ネット通販「SHEIN(シーイン)」のファッションショー。2025年10月16日撮影(Rosdiana Ciaravolo/Getty Images)

イタリア・ミラノで開催された中国発の衣料品ネット通販「SHEIN(シーイン)」のファッションショー。2025年10月16日撮影(Rosdiana Ciaravolo/Getty Images)

フランスは6月、ファストファッション大手企業に罰則を科す方針を打ち出した。これはファッション市場に対するこれまでで最も大胆な政策の1つであり、無制限の使い捨てファッションの時代が終わりを迎えつつあるという明確なメッセージを伝えている。

しかし、現実を見てみよう。これはファストファッションの全面的な禁止ではない。安価な大量生産服があふれかえる状況が終わるわけでもない。むしろこれは「超高速」サービスを売りにする中国の「SHEIN(シーイン)」や「Temu(テム)」「Aliexpress(アリエクスプレス)」といった企業の「超ファスト」ファッションを抑制しようとする、的を絞った規制強化だ。米国が関税によってこれらの企業に一撃を加えたものの、依然として数千もの超ファストファッションが量産され、底値で市場に出回っている。

真に変化する点と変化しない点を理解することが重要だ。これは世界的な規制強化を促すことになるのだろうか? それとも、何十年も先回りしてきた産業に追いつこうとする、一政府の単なる象徴的な動きに過ぎないのだろうか?

中国企業を標的とする法案

フランスの動きは全くの白紙からの出発ではない。これは2020年から導入が進められてきた既存の廃棄物削減・循環経済法に対する的を絞った改正だ。新法案はフランス国内で販売される超ファストファッション製品に環境罰則を科すことを提案するもので、過剰生産に依存する事業形態を持つ企業ほど罰金が重くなる仕組みだ。

また、超低価格で使い捨ての流行商品を積極的に販売する企業を対象とした広告規制も盛り込まれている。この法案を巡る議論で、シーインとテムが象徴的存在となっているのは偶然ではない。アルゴリズムを駆使したデータ主導型のシステムにより、両社は世界最大級の小売企業へと成長した。シーインの昨年の売上高は380億ドル(約5兆8000億円)に達し、今もなお増加している。こうした観点から、消費者が小規模な企業を支援するよう促される世界で、フランスの法案は論理的かつ合理的に映る。

しかし重要なのは、この法案がすべてのファストファッション企業を平等に標的にしているわけではないという点だ。スペインの「ZARA(ザラ)」やスウェーデンの「H&M(エイチ・アンド・エム)」といった伝統的な大衆向けブランドは、スピードや大量生産、安価な外部委託労働に依存しているにもかかわらず、本法案の直接的な標的にはなっていない。これらの企業の多くも中国で製品を製造しているが、この法案では異なる規制が適用される。

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翻訳・編集=安藤清香

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