トヨタ自動車、トヨタ不動産、トヨタアルバルク東京が協働で推進する多目的アリーナ「TOYOTA ARENA TOKYO(トヨタアリーナ東京)」が、東京お台場エリア・青海に10月3日Bリーグ開幕戦で開業。11日、12日には人気4人組バンド「Official髭男dism」による音楽ライブこけら落とし公演が開催された。
男子プロバスケットボールBリーグB1のアルバルク東京のホームアリーナで、収容客数は約1万人(音楽興行時は約8千人)。りんかい線・東京テレポート駅、ゆりかもめ・青海駅から徒歩4〜5分というアクセスを誇り、初年度は貸館を含めて稼働率ほぼ100%、150万人程度の集客を見込んでいる。
周辺地域では、東京都が臨海副都心の新たなランドマークとして整備を進める世界最大級の噴水「ODAIBAファウンテン(仮称)」(2026年3月完成予定)や、テレビ朝日が建設中の複合型エンタテインメント施設「TOKYO DREAM PARK」(2026年3月27日開業)、コナミグループの次世代研究開発拠点・複合施設「コナミクリエイティブフロント東京ベイ」(2025年10月末開業)といった、さらなる再開発も進んでいる。
第2次安倍内閣の成長戦略「日本再興戦略 2016」で掲げられた「スポーツの成長産業化」の柱として経済産業省とスポーツ庁が推進してきた「スタジアム・アリーナ改革」や、来シーズンから始まるBリーグの構造改革「B.革新」による、5000席以上かつスイートルーム等を備えたアリーナの確保を参入条件とした最上位ディビジョン「B.LEAGUE PREMIER(B.プレミア)」の新設などを背景とした、全国的なアリーナ建設ラッシュの中、2024年に開業したMIXI・三井不動産の共同事業による「ららアリーナ東京ベイ」、DeNAと京急電鉄が共同開発計画中の「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」* などとともに民設民営の首都圏大型多目的アリーナとして、そして何よりトヨタ自前のアリーナとして早くから注目されてきた。* 開業時期について、建設業界の人手不足などを理由に、当初目標の2028年10月から2年ほど先になる見通しが発表されている(2024年10月1日ディー・エヌ・エー発表)
開業記念式典に出席した、小池百合子東京都知事も「パラスポーツを含む、さまざまなスポーツの活動拠点として、多くの方々にスポーツの価値、素晴らしさを届けることを心から期待している」と祝辞を述べ、Bリーグの島田慎二チェアマンが「間違いなく世界でもトップクラス」と太鼓判を押す。
トヨタアリーナ東京は「可能性にかけていこう」をコンセプトに、「スポーツ」に加えて、「モビリティ」「サステナビリティ」といった従来のスポーツ施設では見られない重点テーマを掲げ、「今までになかった多目的次世代アリーナ」を目指してきた。
豊田章男トヨタ自動車・トヨタ不動産代表取締役会長は「皆さまとともにいろんな感動や熱狂ができるキャンバスができあがった。一緒に盛り上げていきたい」「お台場を盛り上げるためには接着剤になるようなモビリティも必要になるのでは」とコメント。トヨタ自動車でアリーナプロジェクトを担当する大場義弘氏も「スポーツはもちろんのこと、モビリティについても、我々自身が様々な挑戦をしていく」と力を込める。
会長自身のネットワークも含め、トヨタのスポーツ・エンタメ関連リソース、本業のモビリティ事業力が惜しみなく投じられていくことだろう。
このアリーナの運営を担う、トヨタアルバルク東京代表取締役社長の林邦彦氏は、「トヨタ自動車の体験型テーマパーク『メガウェブ』があった地でその意思を引き継ぎ、さらなる幸せの量産に向けて、日本そして世界に向けた活動、発信をしていく」との強いメッセージを発しつつ、大きなプレッシャーに向き合ってきたという。
トヨタ流のクラブ・アリーナ経営について聞いた。
●「TOYOTA ARENA TOKYO」施設概要はこちら
● 記事の内容
・クラブとアリーナの「一体経営」 プレッシャーと絶好調の理由と課題
・他人資本では限界がある
・歌舞伎から着想。ターゲットを逃さぬ体験設計
・音楽ライブにはこう挑む
・「次世代アリーナ」をどう作り上げたのか?
・サステナビリティがこんなにも楽しい理由
・スポンサー収入への影響は?
・モビリティの力で目指すこと
・Bリーグ、クラブの現状は?
・選手絶賛!「楽屋」に込めた想い
──2015年に新ホームアリーナ構想がスタートしてから、2022年8月に建設を発表して翌2023年7月に着工、今年6月に竣工しました。9月13日・20日にプレシーズンゲーム、9月15日に開業記念式典を実施して、10月3日Bリーグ開幕戦「宇都宮ブレックス戦」で正式開業を迎えました。まずは今の心境を聞かせてください。
私が社長になってからアリーナを開業するまでの9シーズン、10ヵ所もの会場でホームゲームを開催してきました。東京都をフランチャイズとするクラブとして、大都会でBリーグの規定である5000席以上の会場をシーズン中8ヵ月間、土日を中心にまとまった日数をブッキングすることは至難のわざで、かなり苦労した9シーズンでした。
切望してきた新ホームアリーナで迎えた10月3日の開幕戦は、試合の結果はともかくとして、たくさんのファンの方たちに来ていただいて、それも昨年度チャンピオンの宇都宮さんと対戦できたことは、本当に感慨深いひと時でした。
クラブとアリーナの「一体経営」 プレッシャーと絶好調の理由と課題
──今年6月、パナソニックとのパートナーシップ契約締結発表会の際に「クラブとアリーナの一体経営で、トヨタグループを背負っている立場として、とにかく無事にスタートしなければならず、絶対失敗できない。やっとその入口に立てるところまで来て、ほっとしている」とおっしゃっていました。そのプレッシャーとはどのようなものだったのか、教えてください。
一つは、来シーズンからBプレミアが始まるということで、これまでよりナイトゲームが増えて、土日の連続試合が少なくなるなどといった、大きな変化に対応しなくてはなりません。
私自身、そういったレギュレーションが変わるシーズンを、使ったことのない初めてのホームアリーナで迎えることになるのは、荷が重いというふうに感じていました。



