TOYOTA ARENA TOKYO 好発進 トヨタ流「単なるハコ作りではない」次世代アリーナ経営とは?

トヨタアリーナ東京 開業記念式典|左から)アルバルク東京のザック・バランスキー選手、トヨタ不動産代表取締役社長の山村知秀氏、トヨタアルバルク東京代表取締役社長の林 邦彦氏、同代表取締役会長の早川 茂氏、トヨタ自動車/トヨタ不動産代表取締役会長の豊田章男氏、東京都知事の小池百合子氏、Bリーグチェアマンの島田慎二氏、車いすバスケットボール選手の財満いずみ氏、Dリーグ CyberAgent Legit所属のTAKUMI氏、スポーツ庁長官(当時)の室伏広治氏、アルバルク東京マスコットキャラクターのルーク

ですから、絶対に今シーズン最初からホームアリーナを使い始めないといけない状況の中で、近年の建設業界における工期遅れの問題で、間に合わない可能性があるというひやひや感がありました。

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そしてそれが竣工できたということで、もう本当に一旦ほっとしました。

鹿島建設さんをはじめ、建設に携わっていただいた方に、色々な障壁を越えて予定通り竣工させていただいたのはとてもありがたいことです。

トヨタアルバルク東京代表取締役社長の林邦彦氏
トヨタアルバルク東京代表取締役社長の林邦彦氏

また、我々はこれまでバスケットボールの興行しかやったことのない会社でしたが、新しいアリーナではバスケだけをやっていればいいというわけではなく、多目的で使っていきながら365日にぎわいのある施設にしていかなくてはなりません。

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果たしてバスケ以外の興行をブッキングしていくことができるんだろうかと非常に不安な部分がありました。

アリーナが作られてから、我々自身がどういうふうに使うかとか、チームの成績がどうかということは、これまでの9シーズンもずっと受け続けているプレッシャーですので、どう克服するか、それなりに知恵はついてるんですけれども、バスケ以外のところは自らの経験値が全くなかったので。

──工期遅れや建設費高騰の問題については、どのようにクリアしたのでしょうか?

工期を守っていただくことについては、鹿島建設さんと、あとコンサルティングをお願いしていたNCMさんと山下PMCさんにもしっかり工程管理をやっていただきました。

建設費に関しては、いまの建設業界の状況で費用高騰の問題を拒絶し続けても、良い仕事をしていただく環境にならないと思っていました。トヨタ不動産さん、鹿島建設さんと3社で相当なネゴシエーションはありましたけれど、お互い重要なポイントを認識して譲り合いながら、何とか妥結して前に進むことができました。

建設風景/(c) TOYOTA ARENA TOKYO
建設風景/(c) TOYOTA ARENA TOKYO

──アリーナの総工費と、事業目標や経営計画について、お聞かせいただけますか?

建設費* については、我々が契約の当事者でないので、お話させていただいていません。* 建設事業主・建物所有者であるトヨタ不動産も非公表

決算等も、Bリーグにはレギュレーションにあるので数値を出している* わけなんですけども、他のところでは非公表としています。ですので、経営目標等についてもちゃんと設定をしてスタートしているのですけれど、明確な数字は差し控えさせていただければと思います。* B.LEAGUE クラブ決算概要 

初年度、150万人程度の集客を見込んでいます。

──アリーナ経営の大テーマとも言える、年間30試合程度のホームゲーム以外の「稼働率」はほぼ100%とのことで、先ほどブッキングに関する不安のお話がありましたが、絶好調のスタートと言えそうです。イベント誘致の詳しい状況を教えてください。

コンサート利用が多いですが、我々は「スポーツ」「モビリティ」「サステナビリティ」と3つの重点テーマを掲げていますので、スポーツにはできる限り力を入れていきたい。

ダンスのプロリーグ「Dリーグ」やバレーボール国内トップリーグの「SVリーグ」、格闘技、車いすバスケ、スペシャルオリンピックスと幅広いスポーツの使用が決まっており、同じBリーグのサンロッカーズ渋谷さんも来シーズンからここをホームアリーナとして活動されます。

こういった多目的アリーナだと9割ぐらいがコンサート利用というところも多いと思いますが、我々のアリーナではスポーツ利用の割合が他に比べると多いのではないでしょうか。

──現時点での課題は?

本当に100%の稼働率がいいのかどうか、これから検証していかなくてはと考えています。

使ったら、その日のうちに撤収して次の日の設営をしなきゃいけない状態が1年間ずっと続くということが果たしてこのアリーナの使い方としていいのか。どういったフィールドの方々にお使いいただくのがいいのかという点も含めて、一年ぐらいかけて検証をして、一番カンファタブルな稼働率を探っていくことが、これからのアリーナ経営の一つの課題だと感じています。

──建設発表当初からこだわってきた「クラブとアリーナの一体経営」の意義について、聞かせてください。

チームが強ければビジネスとして成功なのかというと、そうじゃないと思うんですね。

もちろんプロスポーツである以上、勝敗は必ず影響するわけで、強いチームのほうが来場者数が増え、人気も出ることは統計的に出ていますので、我々は強くなきゃいけないということではあるんですけれど...。

でもチーム、試合というメインディッシュがどうすればより質の高い、評価いただけるものになるかといった時には、やはりチームの強化だけではなくて、施設的なものが大きなプラス効果につながっていると言えます。

このアリーナのことを非常にいいねと言っていただけるのも、大型のセンターハングビジョンやリボンビジョン、スイートルームといった多種多様なものが試合の価値を上げるための脇を固めているからなんです。

3層+内側すべてが高精細仕様の「センターハングビジョン」に国内アリーナ初の2層の「リボンビジョン」、JAPAN AIRLINES テラススイート|リボンビジョン上層の高さは、実寸の自動車が表示できる2mで国内最大サイズ。
3層+内側すべてが高精細仕様の「センターハングビジョン」に国内アリーナ初の2層の「リボンビジョン」、JAPAN AIRLINES テラススイート|リボンビジョン上層の高さは、実寸の自動車が表示できる2mで国内最大サイズ。

●他人資本では限界がある。全てにおいて自由度が増す経営を

そして、こうした我々が思うような設備や演出が、公共のアリーナを含め、他人資本で限界なくできるかというと、なかなかできない。やっぱり限定的になって、何かを譲らなきゃいけないし、後悔も起きる。

全てにおいて自由度が増す経営によって、チームの強化と施設運営との相乗効果が、他クラブとの差別化に大きく寄与するのではないかと当初から考えていました。

とは言え、5000席以上のアリーナと練習場とオフィスを建てられる土地がいったい東京のどこにあるのだと半ば諦めていましたが、ここ臨海副都心の青海の地にあったトヨタさんの施設を、将来的発展を一つ目的にしながら模様替えということで、このアリーナに変えていただいたということは、非常に大きな出来事でした。

それをやっていただいた以上はしっかり、ずっと言ってきた一体経営によるシナジーを出さなきゃいけないし、多種多様に使っていただいて、たくさんのお客様に来ていただいて、にぎわいを見せて地域を盛り上げることができるように、社員全員で頑張らなくてはいけないと思っています。

(c) TOYOTA ARENA TOKYO
(c) TOYOTA ARENA TOKYO
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画像=トヨタ自動車、トヨタ・コニック・プロ、トヨタアルバルク東京 編集=宇藤智子

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