アップルは9月10日のイベントで待望の新型アップルTVを発表した。今回のデバイスは同社にとって4世代目のセットトップボックス。前回のモデルのリリースは2012年だった。
10月に80ヶ国で利用可能になるこのデバイスは、32GBモデルが149ドル、64GBモデルが199ドルで発売される。アップル最新のプロセッサーを搭載したほか、コントローラーにはゲームの操作用にジャイロスコープも装備し、Siriを通じてボイスコマンドで操作が可能になっている。
今回のイベントではアップルTVを通じたアプリ体験の説明に多くの時間が費やされた。アップルは今回、tvOSという新たなOSを開発し、そのプラットフォームをアプリ開発者らに開放する。
「我々がテレビの未来に抱くビジョンはシンプルで、かなり挑発的だ」とティム・クックCEOは会場で語った。「テレビの未来はアプリなんだ」とクックは言う。新型アップルTV発売に際し、同社はiPhoneと同様なアプリストアを用意した。そこではおすすめのアプリや売れ筋のアプリ、ランキングなど、従来と同じアプリストアを展開する。
「ギターヒーロー」などの有名スマホゲームのアップルTV版が公開されるほか、これまでスマホ向けに存在しなかったタイトルも公開される。ゲーム以外でも動画ストリーミングコンテンツにおいて、新たなユーザー体験が可能になっている。
例えばメジャーリーグベースボールの試合中に、今シーズンの全ての試合結果を参照したり、同時に複数の試合を視聴することが出来る。動画コンテンツはiTunesだけでなく、 Netflixや Hulu、HBO、さらに Showtimeなどの複数のプラットフォームから選択できる。
またユーザーはSiriを通じて映画の最新作や出演者情報を入手できる。イベントではコントローラー下部のSiriボタンをプッシュし、出演者情報をサーチする場面が公開された。さらに、映画の台詞が聞き取れなかった場合はSiriに「今なんて言ったの?」と質問すれば、すばやく動画を巻き戻し、字幕付きで再生する様子などが紹介された。
ただし、現状のアップルTVは同社にとってさほど台数がさばける端末では無い。今年1月の発表では、これまでのアップルTVの販売台数は2500万台。調査会社IHS Technologyの担当者は「アップルは今回の製品でRoku 3やAmazon Fire TVと競合することになるが、価格の高さが原因で、さほどの台数は見込めないかもしれない」と語っている。
アップルの製品は144ドルと199ドルの2種類だが、競合のRoku 3 が99ドル。 Amazon Fire TV が99ドル、グーグルの Chromecastが35ドルとなっており、その価格差は歴然としている。ボイスサーチ機能に関しても、Rokuや Fire TVが既に実装している機能だ。
ただし、新型アップルTVの能力には、まだまだ未知数な部分が多い。同社がこれまで作り上げてきたアプリのエコシステムを、本気でテレビに適応させるとしたら、その威力は計り知れない。関係者の間では、アップルが独自のテレビ番組や映画の製作に取り掛かっているという噂も出ている。
2014年のデータでは、動画ストリーミングサービスの分野でアップルの地位は米国で4位(昨年8月にパークアソシエイツが発表した資料による)。突然現れたクロームキャストがこの分野で1位のシェアを奪っている。ストリーミングデバイスの市場規模は2014年、インストールベースで5900万回だったが、2020年には2億2000万回まで成長するとIHS Technology担当者は述べている。