ディズニーが当局に提出した書類を分析したところ、映画『スター・ウォーズ』シリーズで興行収入が最も多かった作品が明らかになった。驚くべきことにそれは制作費用が最も多くかかった作品だった。
映画の利益を計算するには、制作したスタジオが得た収益と制作費用を知る必要がある。前者は映画の興行収入を収集・分析しているアマゾンの「Box Office Mojo(ボックス・オフィス・モジョ)」で知ることができるが、後者は通常、門外不出の秘密だ。というのも、米国で映画が制作される場合、スタジオはその費用を総支出としてひっくるめ、明細を公表しないからだ。
英国の税制によって、ディズニーの『スター・ウォーズ』シリーズの映画制作費が明らかに
英国で撮影される映画の場合は状況が異なる。英国で撮影するスタジオは、制作費の少なくとも10%が英国で発生した場合に限って、英国で支出した額の最大25.5%の払い戻しを受けることができる。これを英国の当局に証明するため、スタジオは英国で制作する映画ごとに制作会社を設立する。
払い戻しを受けようとする会社は財務諸表を提出しなければならない。この財務諸表は制作にかかる総費用や払い戻しの水準から、クルーの人数、クルーの社会保障費に至るまですべてを開示しているため、映画制作をめぐるミステリアスな金銭面をつまびらかにすることになる。
便利なことに、ディズニーの『スター・ウォーズ』シリーズはすべて英国で制作されたため、その財務諸表から制作費と受け取った払い戻しの額を知ることができる。制作費から払戻額を差し引くとディズニーの実質の支出額がわかるが、それは全体の一部に過ぎない。
利益を計算するには、興行収入を知る必要がある。もちろん、その大部分は映画館でのチケット販売によるものだが、そのすべてがスタジオの懐に入るわけではない。
映画館がスタジオに支払う金額は、業界ではレンタル料として知られており、典型的な水準は、2014年に1235人の映画関係者にインタビューした映画業界コンサルタントのスティーブン・フォローズによって明らかにされた。それによると、映画館は平均して興行収入の49%を確保しているという。この調査は、業界で広く認知されている「ほぼ均等な配分」に説得力を与えるものだ。
興行収入に加え、マーケティング費用も考慮する必要
興行収入の取り分が、スタジオが映画制作で得る唯一の収入ではないことに注意したい。ディズニーの広報担当者は昨年、「(DVD/ブルーレイの販売やグッズ販売など)制作によって生み出される他の収入もある。映画が全体として利益を生んでいるかどうかを興行収入が正確に反映しているわけではない」と筆者に語った。
だが、制作で他の収入が生み出されるのと同様に、他の費用も発生する。その主なものは、制作会社の財務諸表には出てこないマーケティング費用だ。したがって、興行収入にストリーミングやグッズの売上を加算するのであれば、そこからマーケティング費用を差し引くべきであり、スター・ウォーズにはかなりの額が費やされたとものとみられている。
ディズニーは各作品のマーケティングに投じた額を公表しておらず、グッズやストリーミングの売上における特定の作品の割合を知るのは難しい。グッズ販売の大部分は、特定の映画名ではなく「スター・ウォーズ」というブランド全体を扱っており、ストリーミングの視聴者はシリーズの各作品を見るためにサブスク料金を払っているわけではない。
チケットの売上の取り分からスタジオの費用を差し引くと興行収入が得られるが、それだけではない。
映画の成功を測る、利益と投資利益率(ROI)の違い
はじき出された数字は、各映画の投資収益率を計算するのにも使える。算出するには簡単な計算式がある。要するに、あるプロジェクトに100ドル投資して50ドル戻ってきたら、50%の損失だ。もし100ドル返ってくれば、利益はゼロで収支はトントン。だが150ドル戻ってくれば、50%の利益、つまり業界では投資利益率(ROI)50%ということになる。
したがって、ROIを計算するには、チケット売上のスタジオの取り分から投資(映画制作にかかった費用)を差し引き、残りをスタジオの支出額で割る必要がある。
利益とROIには明確な違いがある。スタジオが映画制作に投じる額を抑えれば、高いROIを生み出すのはずっと簡単だ。制作費用1万ドルの映画が5万ドルの興行収入を得るとスタジオには2万5000ドルが入ってきて、1万5000ドルの利益を得ることになり、ROIは150%となる。



