少数株主の望みは、上場企業を支配する内部関係者が、おそらくは何らかの働きかけを受けて、その割安さを縮小する措置を講じることだ。その手段は自社株買いかもしれないし、あるいは、複雑な企業構造を簡素化し、上場部分をより魅力的にすることかもしれない。あるいは、「清算」に踏み切り、割安さが完全に解消される可能性もある。
バウエルンフロイントは、「私たちはこれらのファミリーに、彼らが望まないことを強制することはできない」と語る。「私たちが注目するのは、自らの利益のために行動しているだけでなく、少数株主を不当に扱っていないファミリーだ」
バウエルンフロイントは、かつては「反対側」で働いていた。ある裕福な家族のために、不動産分析を行なっていたのだ。その家族は、私有資産のコレクションと上場不動産会社を所有していた。やがて、その家族は一般投資家の株式を買い取り、完全に非公開化した。
バウエルンフロイントは、英ロンドン大学ビジネススクールで修士号を取得し、資産運用戦略に関する論文を執筆した。2002年にAVIの一員となり、現在は最高投資責任者(CIO)兼筆頭株主だ。
持株会社は複雑になりがちで、上場企業と非上場企業の株式が入り混じっている。典型的な例が、73歳になるボロレが支配する帝国だ。ボロレの企業群と株式持ち合いは目まいがするほど複雑だが、要約すると以下の通りだ。
Bollore(ボロレSE)は、メディア、物流、通信事業を手掛ける複合企業だ。世界最大の音楽出版社UMG(ユニバーサル・ミュージック・グループ)の株式を保有し、かつて水道事業会社だったヴィヴェンディの株式も所有している。ヴィヴェンディは、長年の買収を経て、事実上の投資信託へと変貌した。UMGの株式に加えて、さまざまな上場企業の株式を保有している。
バウエルンフロイントによれば、ボロレSEとヴィヴェンディはどちらも、清算価値に対して大幅な安値で取引されている。AVIは両社の株式を保有している。
なぜ、ほかの人はその価値を見いださないのだろうか? バウエルンフロイントの答えはこうだ。「多くの投資家にとって、この種の会社は投資対象として不適格だ。彼らが怠け者だからか、この投資が複雑すぎるからか、あるいは、世の中の仕組みに対する彼らの考え方にすっきり収まらないからだろう」
ディールメーカーはなぜ、持株会社とその厄介な少数株主を容認するのだろうか?バウエルンフロイントは、「さまざまな上場、非上場の持株会社の株式持ち合いは、結果として、限られた資本でより多くの資産を支配することを可能にする」と説明する。「これは、ヨーロッパの多くの家族が長年、資産拡大のために用いてきた手法だ」
もう一つの動機は、租税回避かもしれない。持株会社の株価が低迷していることはおそらく、資産税や富裕税の申告において有利に働くのだろう。
(ベルナール・)アルノーは、高級品の帝国を築き上げ、時折「世界一の富豪」の称号を得ることもあった過程で、Christian Dior(クリスチャン・ディオール)という持株会社の株式のわずか2%を公開し続けてきた。この会社の唯一の活動は、広く流通しているLVMHの株式を保有することで、その株価は純資産価値に対して18%の安値で取引されている。
AVIは、ディオールのわずかな浮動株の一部を保有している。バウエルンフロイントは、現在の割安さが、(おそらくは持株会社構造の崩壊によって)いずれ縮小することに賭けている。
大物に付いて回る少数株主は、物事がうまくいったとき、二重の利益を得る。割安さが縮小すると同時に、原資産(underlying asset)のパフォーマンスが向上するのだ。後者に賭けるのは合理的だ。ビリオネアたちは今の地位を、悪い投資で手にしたわけではないからだ。


