部署の代表ごっこはやめよう
冒頭、C部署の管理職であるヤマダさんが言いました。
「もう、うちの部署は業務がパツパツなんで、この案は絶対に呑めない」と。
いやいや、合意形成のための場なんだから、もう少しいろいろな可能性を議論してみようよ、と水を向けても、ヤマダさんは完全なるゼロ回答で押しとおそうとします。
なぜでしょうか?
それは、「立場」でしかモノを言えなくなっているからです。
ヤマダさんは、大勢の前ではC部署全体の代弁者となってしまうのです。
たとえば日本の首相は、少なくとも公式の場では国益を優先した発言を必ずします。拉致問題や北方領土問題で、相手に譲歩するような発言はまずしません。
「北方領土は、もう返さなくていいですよ」なんて言おうものなら、日本国民から総スカンを食らってリーダー失格の烙印を押されるでしょう。
程度の違いはありますが、今回のC部署のヤマダさんも同じです。
発言をした瞬間に、その内容が大勢の知るところとなるような会議では、ヤマダさんは自部署の利益を優先した発言しかできないのです。
「うちが損してでも、全社的にはやったほうがいいですね」などと言おうものなら、C部署のメンバーから総スカンを食らいます。
さらに、大勢の前では発言の修正が許されない空気が醸成されます。
ヤマダさんが全体の利益を考慮して、「全体がよくなるなら、やってもいいですよ」と言ったあと、議論を重ねるうちに、実際にはその案をC部署でやるのは難しそうだ、となったとします。
そこで「やっぱり無理かもしれない」と言おうものなら、「さっき、やるって言ったじゃないか!」と、A部署やB部署から憎悪のオーラを盛大にあびることになります。
それを避けるためには、最初から「受け入れない」という発言をしたほうが無難なのです。


