経営・戦略

2025.11.05 13:30

稲盛和夫も惹きつけた、ハイアール創業者に学ぶ経営モデル「人単合一」の本質

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だがそんなとき、自らに課しているルールがあるという。例えばある経営判断をするとき、最悪の場合に会社が被る損失はどの程度になるのかを見極め、少しでも生き残る可能性があるならば「やろう」と決めるのだ。そして、決めてしまった後には、損失を最小限に抑える努力も怠らない。張は大胆さときめ細やかさを併せもつ、類いまれなる経営者だ。 

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「私には信じている言葉がひとつあります。それは『人は企業の礎、文化は企業の魂』という言葉です。企業にはさまざまな設備や施設があります。しかし、機械だけでは決して価値を生み出すことはできません。価値を生み出すのは人間です。だから人間をいちばん大事にする。これを企業の文化にしなければならないのです」

人的資本経営やステークホルダー資本主義が叫ばれるようになったのはつい最近だ。だが張は、40年も前から「価値創造の源泉は人にある」と気づき、実践を続けてきた。時代がやっと追いついたわけだが、進化する人単合一はさらにその先をいく。張の言う「エコシステムの境界線がなくなる」時代が近いうちにやってくるかもしれない。

“過激さ”と進化の象徴「ハンマー事件」

ハイアール・グループ提供
ハイアール・グループ提供

1985年、ハイアールの冷蔵庫を購入した客が製品に傷がついていたことに不満を訴え、当時工場長だった張瑞敏のところにこの冷蔵庫を見せにやってきた。張はこの客と一緒に工場を回り、代わりの製品を探したが、その過程で400台あった在庫のうち20%にあたる76台で品質に問題があることに気づいた。張はこの76台の冷蔵庫を表の通りに運び出させ、そして、工場の従業員に、公衆の面前で大きなハンマーを使って粉々に破壊させた。当時の中国では新品の製品に不良品が含まれていることは「当たり前」だった。さらに、冷蔵庫は品薄で品質が悪くてもつくれば売れた。そのため、新品で売れるはずだった76台の冷蔵庫の破壊という大胆な行動は中国全土に知れわたり、大きな関心を集めた。そしてこの出来事が、人々の頭のなかでハイアールというブランドと品質を結びつけた。

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文=中居広起 写真=熊谷勇樹

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