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2025.10.27 16:00

アフリカの3億人に電力を──世界銀行も支援するナイジェリアの再エネ革命

アフリカ最大級ともいわれる、ナイジェリアの港湾都市ラゴス。1991年までナイジェリアの首都だった(olasunkanmi ariyo / Getty Images)

開発支援の課題、巨額の投資が成果に繋がらない実態

しかし、「数十億ドル(数千億円)を動かす」とうたう取り組みが、必ずしも現実に成果を上げているわけではない。開発支援の分野では、善意から始まったパイロット事業が本格展開に至らず終わった例が数多く存在する。実際、一部の「インパクト報告」では、約束された資金と実際の成果との境界があいまいで、あたかも公表された資金がすでに具体的な成果を生んでいるかのように示されることもある。多くのプロジェクトは計画段階や初期の試験運用段階にとどまっており、報告されている成果は「実現したもの」ではなく「期待値」にすぎないケースが少なくない。

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投資家が慎重な姿勢を取るのも当然だ。新興国市場では、規制や政治情勢の不安定さに加え、地場企業の財務基盤の脆弱さや通貨の変動といったリスクが常につきまとう。

ナイジェリアは、なぜ投資家の信用を得ることができたのか

そんな中、ナイジェリアが際立っているのは、「信用のハードル」をすでに越えている点だ。GEAPPが同国に拠出した320万ドル(約4億9000万円)のシード資金は、リスクを抑えながらプロジェクトを構築し、技術的専門知識を組み込み、さらに規制当局が受け入れやすい仕組みを整えるよう意図的に設計された。この仕組みをきっかけに、ナイジェリア電力規制委員会(NERC)は電力会社に対し、再生可能エネルギーを一定割合で調達するよう義務づけ、市場の構造が大きく変化した。その結果、わずか2年のうちに、世界銀行などから総額1億7700万ドル(約271億円)の追加資金が同国の電力部門に流れ込んだ。

GEAPPは、リスク低減から実証、政策の策定、そして拡大へと至る一連のプロセスを踏むことで、他の実効性に乏しい宣言とは一線を画す成果を生み出している。「世界全体のエネルギー投資のうち、新興国や途上国に向かうのはわずか5分の1にすぎない。この流れをほんの一部でも変えられれば、より早い電力普及や地域経済の強化、そして公平なエネルギー転換と電力の普及に向けた着実な前進が実現する」とGEAPPのキャロル・コエッチは述べている。

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ナイジェリアの成功が世界の新興国へ広がる可能性

ナイジェリアにおいては、数多くの企業がこのような機会を見出して、ミニ・ソーラーグリッドの導入にさまざまな手法で挑んでいる。たとえばPrado Powerは各地でソーラーグリッドの整備を進めており、中国のエネルギー企業もアルジェリアや南アフリカで同様のプロジェクトに大規模投資を行っている。

人々暮らしと電力アクセスを結びつけたナイジェリアの成果

また、この国での事例は、小規模でも戦略的な取り組みが規制環境を変え、投資を呼び込み、人々の暮らしと電力アクセスを結びつけられることを示している。その成果は単に電力供給量を増やすだけでなく、灌漑や冷蔵設備、中小企業の運営を支えるエネルギーを生み出し、気候変動対策と並行して経済的な利益につながっている。

もしこのモデルが、世界で最も電力アクセスが遅れている国のひとつであるナイジェリアで機能すれば、同様の仕組みは他の開発途上国にも広がるだろう。公平で包摂的、そして持続可能なエネルギーの未来に向けた、実践的な手本となるはずだ。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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