政策との整合性と成果の指標を前提に、各国主導で実装を加速
アフリカにおけるGEAPPのプロジェクト群は、「基盤となる投資と技術的専門知識を組み合わせ、当初から成果を測定可能な形で設計し、各国の優先課題と足並みをそろえる」というアライアンスの基本理念を体現している。ナイジェリアでは、資金提供に加えて電力会社への実践的支援も行い、ミニグリッドが商業的に運営可能であることを示した。これにより、規制当局や民間投資家の間で、「小規模な再生可能エネルギーが国家の電力システムに組み込める」ことへの理解が進んだ。
「サハラ以南のアフリカでは、いまだ6億人が電気のない生活を送っており、これは世界で最も深刻なエネルギー貧困地域となっている。いま行動しなければ、数百万人が“エネルギーに支えられた経済”から取り残されてしまう」と、GEAPPアフリカ担当副社長のキャロル・コエッチは語る。
GEAPPの投資実績、約770億円の元手で約1.2兆円の投資を誘発
2021年のCOP26で設立されたGEAPPはそれ以来、シード資金として5億300万ドル(約770億円)を拠出し、30カ国以上・137件のプロジェクトで総額78億ドル(約1.2兆円)の投資を呼び込んできた。その成果は明確だ。これまでに9100万人が電力にアクセスできるようになり、310万件の雇用を創出・支援し、CO2排出を2億9600万トン削減した。
GEAPPの取り組みの中では、アフリカが総額42億ドル(約6426億円)のプロジェクト群で最大の比率を占める一方、インドでもこれまで26件のプロジェクトへ10億ドル(約1530億円)を投資し、4900万人に電力を届けている。さらに中南米とカリブ海地域では、22件のプロジェクトに5億9900万ドル(約916億円)を投じ、700万人に電力を供給している。東南アジアでも37件の案件に17億ドル(約2601億円)を投資し、約400万人に電力を提供している。
こうした実績は、このアライアンスの手法が有効であることを示している。とりわけ重要なのは、各国が主導する取り組みのほうが成果を上げやすいという点だ。国家政策と整合し、規制当局の承認を得られるプロジェクトほど成果につながりやすい。また、資金提供には技術的な専門知識を組み合わせることが欠かせない。そうすることで、プロジェクトが掲げた目標を確実に達成できる。
こうした投資は、適切に実行されれば、大きな波及効果を生み出す。「私たちの5億300万ドル(約770億円)のシード資金の1ドルごとに、これまでの15倍にあたる総額78億ドル(約1.2兆円)の投資を呼び込むことができた。これは、まだ始まりにすぎない」と、GEAPPのCEOのウーチョン・ウムは語った。


