VC

2025.10.26 08:00

AIブームで復活の「スーパースター投資家」、キャシー・ウッドがバブル懸念を一蹴

キャシー・ウッド(Photo by Joe Raedle/Getty Images)

2022年の暴落、金利よりサプライチェーンが打撃

巨大テック株を避け、小型株への投資を強化したことは、2022年のウッドにとって大きな誤算となった。遠隔医療を手がけるテラドック・ヘルスの株価は2021年から2022年にかけて88%下落し、ゲーム開発ソフトのユニティ・ソフトウェアも2022年に80%下落した。ギンコ・バイオワークス、エグザクト・サイエンシズ、ビーム・セラピューティクス、インテリア・セラピューティクスといったバイオテックやライフサイエンス関連銘柄への投資も、いずれも低迷した。

advertisement

「まさか、あれほどの逆風に見舞われるとは思ってもいなかった。多くの人は原因を金利上昇だと考えている。長期投資型の資産は軒並み打撃を受けた」とウッドは振り返る。「しかし、私たちにとってより深刻だったのは、長期にわたって続いたサプライチェーンの混乱だった。私たちの投資モデルを支えているのは“ユニット成長率”だからだ。新しいテクノロジーでは、販売台数が増えれば増えるほど、生産コストがより速いペースで下がっていく」。

ウッドは、今にして思えば、当時すべきだった正しい判断は、「サプライチェーンの問題や金利の上昇により強い、時価総額が巨大なハイテク銘柄に逃げ場を求めることだった」と認めている。しかし彼女は、現在の政策環境が自らの投資戦略にはるかに強い追い風を与えていると考えている。長年トランプ大統領を支持してきたウッドは、1月にトランプがAI規制の導入を目指したバイデン前政権の大統領令の一部を、撤回したことを称賛している。また、「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」に盛り込まれた新たな減価償却制度が、企業の税負担を軽減した点も評価している。

「現政権で進んでいる規制緩和の規模には本当に驚かされる」とウッドは語る。「関税は好きではないが、この政権が進めている規制緩和と大幅な減税があるなら、関税を受け入れてもいいと思う」。

advertisement

投資時期で分かれるウッドの評価、長期では市場平均を上回る

ウッドに対する評価は、投資家がいつ彼女のファンドに投資したかによって大きく異なっている。直近3年間で見れば、9月30日までのアーク・イノベーションETFの年率平均リターンは31.8%と、S&P500の24.9%を上回っている。しかし過去5年間の成績はマイナス0.8%で、同期間のS&P500の年率16.5%増と比べると大きく見劣りする結果となっている。だが、2014年のファンド設立以来の年率平均リターンは15.3%と、市場平均を2ポイント上回っており、NASDAQ100の16.9%には及ばないものの、その差は縮まりつつある。

ピークから底まで80%もの下落を経験した投資家の再起

ピークから底まで80%もの下落を経験した投資家が再起を果たすのは容易ではない。しかし、ドットコム・バブル崩壊時のナスダックも同じく約80%下落し、その後の25年間で約2000%上昇した。ウッドは、自身のファンドの2022年の暴落も、将来同ファンドの長期チャート上においては「ごくわずかな落ち込み」として振り返られる日が来ると信じている。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事