バブル懸念を一蹴、「AI企業は世界屈指の高収益だ」
「AIに投資している企業は、いずれも世界屈指の高収益企業だ」とウッドは語る。「推論モデルは、時間の経過とともに急速に進化し、その可能性に誰もが驚かされている。多くの人は、いずれはパフォーマンスが頭打ちになると予想していたが、まったくそうなっていない」。
銘柄選別が的中、エヌビディアよりAMDを高く評価
AI関連株の多くは今年、軒並み好調だが、アーク・インベストメントの創業者でCEO兼最高投資責任者(CIO)のウッドは、その中でもとりわけ大きな勝ち組を見抜いてきた。アークは、半導体銘柄では規模の大きなエヌビディアよりもAMDの株を多く保有しており、両社の株はアーク・イノベーションETFのそれぞれ4.0%と1.1%を占めている。今年に入りAMDの株価が2倍になったのに対し、エヌビディアの上昇率は36%にとどまっており、この投資判断は先見の明があったといえる。
ウッドは、エヌビディアの時価総額が4兆4000億ドル(約668.8兆円)に達する一方で、AMDは4000億ドル(約60.8兆円)未満にとどまっており、その割安さが成長余地の大きさを際立たせていると指摘する。「より大容量のメモリーを備えたチップでAMDが優位に立ちつつある」とも強調した。
パランティアは利益確定も、「割高でなければ、テスラと並ぶ比重を占めていた」
パランティアのパフォーマンスはさらに際立っており、株価は昨年11月以降に337%上昇した。同社のデータ分析技術は、政府機関や民間企業が膨大なデータセットを統合し、パターンを見つけ出すのに役立っており、過去12カ月の売上高は前年同期比39%増の34億ドル(約5168億円)、純利益は7億6300万ドル(約1160億円)に達した。しかし、バリュー投資家の多くは、パランティアを「AI株バブルの象徴」と見なしている。同社の時価総額は4300億ドル(約65.4兆円)と、売上高の126倍という驚異的な水準にある。
ウッドは2024年8月以降、自社が保有するパランティア株の70%を売却して利益を確定させたものの、同社株は依然として旗艦ファンドの4.2%を占める第9位の保有銘柄となっている。
「パランティアの株価が今のように割高でなければ、当社のポートフォリオ内でテスラと並ぶ比重を占めていたはずだ」とウッドは語る。彼女はパランティアがプラットフォーム・アズ・ア・サービス(PaaS)分野で確固たる地位を築き、事実上その領域を支配しているとみており、アークのポートフォリオにおけるテスラ株の比率(11.9%)に言及しながら「パランティアのような企業は他に存在しない」と付け加えた。
最大の投資先はテスラ、EVではなくロボタクシーを重視
これは、テスラ株を約10年間にわたって保有してきたウッドにとって、極めて高い評価と言える。テスラの株価は2020年に731%も上昇し、ウッドのファンドの好調を支えた主要銘柄となったが、2022年には彼女のファンドと同様に急落し、68%下落した。アークは昨年、テスラ株の2029年までの目標株価を1株2600ドル(約40万円)に引き上げており、時価総額が約9兆ドル(約1368兆円)に達すると見込んでいる。
テスラ株は現在1株443ドル(約7万円)前後で取引されており、時価総額は1兆4000億ドル(約212.8兆円)だ。アークの試算によれば、2029年までにテスラの利益の86%が、6月にテキサス州で始動したばかりのロボタクシー事業からのものになる見通しだ。
「電気自動車(EV)は“1度売ったら終わり”のビジネスだ。車を販売しても、5年後に顧客が戻ってくることを願うしかない。しかも利益率は非常に低い」とウッドは語る。「一方、アナリストはロボタクシーの収益構造を見る際、まったく別のモデルを使う必要がある。こちらはサブスクリプション型、つまり継続的な収益モデルで、利益率も非常に高い」。
アーク・イノベーションETFはテスラ株に10億ドル(約1520億円)を投じており、その保有比率は第2位の保有銘柄であるコインベースの2倍に達している。ただし、ウッドはテスラを除けば、時価総額1兆ドル(約152兆円)規模の巨大テック企業にはあまり積極的ではない。アマゾン、メタ、エヌビディアはいずれもポートフォリオに含まれているものの、上位15銘柄には入っていない。


