リーダーシップ

2025.10.27 08:45

NPO理事長が語る新時代の組織論、公共に資するリーダーシップの要件

私はカンボジアで公教育改革、特に教員の養成をやっている団体、認定NPO法人SALASUSU(以下サラスースー)の理事長を務めている。2002年、東京大学在学中の19歳のときに友人達とともに「かものはしプロジェクト」というNPOを起業したことで私自身のこの旅は始まった。

きっかけは、当時お世話になった方から社会問題を事業で解決する「ソーシャルアントレプレナー」という言葉を教えてもらったこと。当時はまだあまり知られていない概念で、とても新しさと面白さを感じた。今から振り返ると、長らく日本銀行で働いていた父親から引き継いだ「公共性への共感」がそこにはあったのかもしれない。とはいえこれといって取り組みたい社会課題のテーマがなかった私は、同じサークルの中に「人身売買」の問題解決を志す仲間を偶然見つけ、意気投合し起業した。なおその後、NPO活動に夢中になりすぎて順調に大学を中退し、2009年にはカンボジアに移住した。

2018年に、かものはしプロジェクトのカンボジア事業を独立させる形でサラスースーを設立。現在は25人のスタッフ(うち19人はカンボジア人)と共に、カンボジアを中心とした公教育改革に取り組んでいる。サラスースーというのはカンボジア語で「頑張るための学校」という意味だ。具体的には自分達で実験校を運営し、新しい教育、教師の育成方法に挑戦するとともに、さまざまなカンボジアの公立学校に赴き、教師へ研修機会を提供している。

この先は、公共の課題に取り組む事業を行っていくこの23年間の中で葛藤と対話を繰り返し、学びと変容を経て見えてきたリーダーシップの資質を、「公共に資するリーダーシップ」として論じたい。何分手に余る大きなテーマではあるので、あくまでも実践者としての私の現在地点の一論考として受け止めてもらえるとありがたい。

なぜ普通の「リーダーシップ」と公共に資するリーダーシップを区別して書く必要があるのか。一言で言うならば、影響を与える範囲が通常の組織におけるリーダーシップより大きいと考えているからだ。その中で今まで語られてきたリーダーシップに加えて、さらに大切だと思うことを自分の経験から抽出してみることとする。

次ページ > 公共に資するリーダーシップに必要な3つの要素

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