最後にラディカルセルフケアについて。この自分自身の傷と向き合って癒していくプロセス自体、一人では決してできなかった。仲間のみんなと手を繋いで自分の暗いところに潜っていったような、そんな豊かな時間だった。いつも話しながら泣いてしまっていた僕の話を聴いてくれてありがとう。
「セルフケア」と聞くと、なんとなく「月曜日の朝一、会社に元気に行くために自分で自分を整えておくこと」と思い過ぎている方に出会うことがある。僕はもっと徹底的に、根本的に自分のことを中心に置いてケアしてほしいと思っている。例えば会社のためじゃなく、自分のご機嫌を目的とすること。例えば自分のことをケアするにも、一人ではなく信頼できる他人と共に行うこと。これが「ラディカル」なセルフケアであり、自分が誰かの人生のケアを手伝うということでもある。自分の心の中にエネルギーが湧き出る泉を見つけ、そこと繋がっていくためのセルフケアが欠かせないのだ。
メンターの一人に、「死ぬ間際に『お前はお前であったか』という問いに正面から『はい』と答えられるような人生を送りなさい」という言葉を贈られたことがある。そんな風に生きたいと思うなら、自分が何者なのかを探究し、表現し続ける必要がある。自分は何に怒りを覚え、何に傷ついていて、それがどう癒されて自分を受容できるか。その自分への探究の旅を活動と共に歩めたことが今の自分に繋がっていると思うし、自分として生きる事に繋がっている。自分の中に社会があり、自分を癒すと共に社会を癒していく。これが私の考えるオーセンティックリーダーシップである。
後編では、リーダーシップに必要な3つ目の要素として、他者への深い理解に不可欠な「声なき声を聴く専門性」について論じる。


