文化×ビジネスを追求するカルチャープレナー、新時代の挑戦者たち

文化を軸にこれまでになかった新しいビジネスを展開しているカルチャープレナーたち。今年の受賞者たちを一挙紹介する。そのユニークな取り組みからは、これからの新しい可能性を感じられるだろう。


より良い未来を築くため 想像力で海を越えゆく表現者

寒川裕人|現代美術家

絵心のある父親の影響で幼少期から美術に親しんでいたが、母の死と、高校時代に読書を通して知ったシンギュラリティ(=人工知能が人間を追い越すとき)の概念が、自身の進路に決定打を与えた。

「いつかAIが人間を超えてくるのなら、人間がずっとわからないものや、言葉にできないものこそ、人間の使命として残っていくのではないかと思ったんです。当時は文学や映画、ゲームの分野にも関心がありましたが、言葉を超えて瞬時に心へ届く美術の力に引かれてこの道に進みました」

個展「新しい海-After the Rainbow」の様子。観覧を求める人々で東京都現代美術館前に長蛇の列ができた(左)。寒川とチームが自ら設計・DIYした「Atelier iii」(右)。
個展「新しい海-After the Rainbow」の様子。観覧を求める人々で東京都現代美術館前に長蛇の列ができた(左)。寒川とチームが自ら設計・DIYした「Atelier iii」(右)。

才能はたちまち開花した。大学在学中から海外ギャラリーのプロジェクトに参加し、高く評価された卒業制作は金沢21世紀美術館の企画展へと発展。2021年に東京都現代美術館で開かれた個展は、同館を史上最年少で満たす快挙にとどまらず、コレクターらによって常設美術館を建てるプロジェクトへつながった。インドネシア・バリ島で26年開館を目指し建設中だ。

新世代を代表する地位を確立しているが「現代美術は栄枯盛衰が早く厳しい世界。作品をブームとして消費しない工夫が必要」と語る。活動初期から自身の拠点「EUGENE STUDIO」を設け、ペインティングからインスタレーションまで、ジャンルを横断して持続的に作用するアートを展開してきた。作品にはテクノロジーと密接するものもあるが、自身は8年ほど前からブラウザ使用を1日5分以内に制限し、SNSはおろか検索機能も封印しているという。いわゆる“トレンド”を関知しない寒川の作品が、現代を生きる人々の心を打つ理由とは。「もし僕が肖像画や伝統的な表現方法を選んでいたら、今のような状況はなかったでしょう。情報が飽和する時代において、“実感”を求める人が増えたのかもしれません」

世界をもっと良くするために人ができることは何か──。古代から問われてきた永遠のテーマに、アートで挑み続けている。

日本古来の色彩や工芸的価値観を3Dプリントで再構築

大日方 伸|積彩 CEO/デザイナー

25歳でデザインスタジオ「積彩」を立ち上げ、見る角度によって色彩を変化させる3Dプリント技術「Transcolor Printing」を独自開発。十二単や民藝から着想を得た日本人特有の豊かな色彩表現と、3Dプリントという先端技術を融合させる試みは、ファッションや建築など多分野から注目を集め、産業連携にも活動の幅を広げている。

大阪・関西万博でパナソニック製の植物由来素材「kinari」を用いたオブジェ制作を手がけるなど、環境負荷の低いものづくりにも定評がある。

専門家と共創する“感動体験”で日本文化を世界へ届ける

飯倉 竜|J-CAT代表取締役

文化とそれに携わる人への支援を事業ミッションに据えてJ-CATを創業。運営するECメディア「Otonami」と「Wabunka」では、茶道や写経、工芸など多彩な日本文化の魅力を知る各分野の専門家が案内役を務める特別な文化体験が国内外で支持を得ると同時に、体験提供者の自立的活動の後押しにもなっている。今春にはより気軽な学びの機会を提供する「Otonami Lounge Tokyo」を東京駅に開設。大手企業とも連携しながら日本の資源価値を多角的にとらえた新ビジネスを展開している。

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文=眞板響子

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