五感で味わうエンタメの最前線“イマーシブ体験”の設計士
広屋佑規|NO MORE CCO

時代に即した物語の開発力とフィジカル空間での実装力を強みとする広屋は、これまでに商店街でのミュージカル実演や人気漫画を原作としたレストラン型演出を行う「Out Of Theater」の創設や、コロナ禍に旗揚げしZoom上で稽古・上演を敢行した「劇団ノーミーツ」など、常に従来の劇場の枠を飛び越えた新しいエンタメを開拓してきた。
現在は2024年創業のスタートアップ「NO MORE」でクリエイティブトップを務め、イマーシブ(没入型)企画展に注力している。その一例が、同年5月に開催した「思考実験展」だ。魔王討伐に向かう冒険者になりきり、さまざまな問いやストーリーを通じて本来の「じぶん」を見つけるという独自の構成が話題を呼び、開幕1週間でチケットが完売。SNSで体験者の声が拡散されるとさらに評判となり、開催した2カ月間で約1万2000人を動員した。
「情報があふれる社会のなかで、自分が本当に好きなものや、理想の生き方についてみんなが悩み、それを的確に言語化したい、理解したい、人に話したいという欲求もある。鑑賞型の舞台演劇や映画とは異なり、能動的に参加できるイマーシブ体験はSNSで発信しやすく、今の時代と相性がいいんです」
今年4月には、新たな没入体験を生む特殊なLEDブースの提供も開始した。角がない5面のLED空間に投影したシームレスな映像で人を包み込み、別世界へ飛び込んだように錯覚させる仕掛けで、早くも大手のアニメーションスタジオや東宝映画のプロモーションに採用された。
「イマーシブ系エンタメは、日本ではまだ各々の企画が“バズ”の領域を出ず、業界的には黎明期。しかし韓国や中国では、すでに“体験”をしに出かけて余暇を過ごすという遊び方が定着しつつあり、大きな市場ができてきています。日本のIPコンテンツも、空間体験とリンクさせる新しい仕掛けでもっと広く世界へ向けて発信できるはず」
巧みに設計された物語と最新テクノロジーによる空間演出に漬かる新しい“遊び”で、世界に熱狂を巻き起こしていく。
オートクチュールを贅沢の先へ次代を磨くデザインリーダー
中里唯馬|ファッションデザイナー

ベルギー・アントワープ王立芸術アカデミーファッション科を修了後、ブランド「YUIMA NAKAZATO」を設立。伝統的な手仕事に先端テクノロジーを融合させたコレクションで注目を集め、近年はオペラやバレエの衣装を手がけるなど舞台芸術の分野にも進出している。

国際的に活躍の幅を広げる一方、2021年に創設した「Fashion Frontier Program」では、バックグラウンドの異なる審査員との議論や作品の発表・講評を通じて若手デザイナーに学びの場を提供し、次世代の人材育成にも注力。昨年は、ケニアに集まる古着からドレスを作り出すことで廃棄衣料問題に向き合った挑戦がドキュメンタリー映画『燃えるドレスを紡いで』として公開され、米最大の映画祭のひとつであるトライベッカ映画祭で特別賞を受賞するなど、ファッションを超えた文化的提案力をもつ逸材として認められている。
隠れた資源を発掘し光を当てるプロジェクトデザイナー
出村光世|Konel・知財図鑑 代表

2011年にクリエイティブ集団「Konel」を設立。1000人以上の脳波を買い取って絵画を生成する「脳波買取センター BWTC」や、心や体にまつわる社会課題を覆す試み「#しかたなくない」など斬新なプロジェクトを推進してきた。並行して、研究者や企業のアイデアを可視化して新規事業への活用を促すデータベース「知財図鑑」や、下北沢駅の高架下施設「ミカン下北」のブランディングなど、アート、デザイン、テクノロジー、ビジネスを軽やかに越境し、文化に新たな視座をもたらしている。

日豪の理解深める交流拠点「文化商社」をシドニーで経営
松元由紀乃|Simply Native 代表

経産省関連機関への勤務を経て2016年にシドニーでSimply Nativeを創業。日本全国の生活工芸品を商品化してオーストラリア市場で展開し、日豪友好の象徴でもあるカウラ日本庭園の修復には、商材として取り扱う日本瓦を提供した。

昨年オープンした現地の旗艦店は流行に左右されない日本文化の体験型コミュニティとして話題に。優れたビジネスセンスで多業種へのプロデュースを展開し、行政やボランティアの協力に頼らない循環型の文化普及モデルを確立している。


