日本IPを渋谷から発信する「仕掛け番長」
栗俣力也|IP書店プロデューサー

いち書店員として始めた店頭POPづくりから才覚を現し、いつしか斬新な販売企画で作品をヒットさせる“仕掛け番長”と呼ばれるようになった。現在はカルチュア・コンビニエンス・クラブIP書店編集部部長として、企画立案から販売管理まで、IP関連事業全体を任されている。
書店を、単調な販売空間から進化させ、漫画やアニメ・ゲーム・小説といった日本発IPの世界観を再現するデザイン力に定評がある。昨年オープンした「大阪IP書店」はその代表例だ。VTuberなど配信者をはじめとする人気コンテンツのグッズ約2万点が、コミックマーケットのようなブース構成で並ぶ新形態の書店として注目を集めた。主戦場であるSHIBUYA TSUTAYA6階の「IP書店」には作品と連動して世界観を体感できる展示スペースを常設化し、ファン同士の交流やSNS拡散を促す都市型文化拠点として充実を図った。
「今の日本では、IPをうまくビジネスにつなぐことができなかったり、ギャンブル的に海外に進出して失敗してしまう例が少なくありません」と栗俣は言う。エンタメがあふれる現代において、消費者は「自分が楽しめるものがみつからない」、IPホルダーは「より多くの人に知ってもらう方法がわからない」、作品企業は「IPの売り方を知らない」と、それぞれに悩みを抱えている。そんななか、さまざまな仕掛け販売の経験を積んできた栗俣は全方位から頼られる存在だ。
「例えば、個人の配信者にとってスクランブル交差点での発信は高難度ですが、グッズ展開やイベントで先に収益を確保できれば資金面をクリアできます。ファンにとっても、好きなコンテンツの商品化や、自分の“推し”の活躍はうれしい。IPホルダーの意向とビジネスの両立が、結果的にエンドユーザーの喜びにもなる、という順序で考えています。今後はIP書店の海外出店も視野に入れつつ、世界で活躍をめざすIPの編集をしていきたい」
日本のIPとビジネスの交差点として書店という「場」を開拓し続ける。
自らのアイドル経験を生かし次世代“KAWAII”を世界へ発信
木村ミサ|KAWAII LAB.総合プロデューサー

10代で読者モデルとして芸能活動を始め、アイドルグループ「むすびズム」ではリーダーを経験。グループ解散後にアソビシステム内のアイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」総合プロデューサーに就任し、「CANDY TUNE」や「CUTIE STREET」などを手がけている。

なかでも「FRUITS ZIPPER」(写真)は、代表曲「わたしの一番かわいいところ」がTikTok総再生回数30億回超を記録し、日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞。楽曲や歌詞の選定から衣装・振り付け・MV演出・SNS展開まで一貫して手がけることで、メンバーの個性を最大限に生かしつつ、ファンに支持される世界観づくりを戦略的に成功させている。SNS時代の“バズ”を生む企画力のみならず、自らがステージ上に立った経験を起点に、“かわいい”の多様な表現とアイドルシーンの健全な運営方法を追求する姿勢が、これからの日本のアイドル文化を更新する存在として注目されている。
歴史・風土を日本酒と結び改革精神で酒蔵を再建
今西将之|今西酒造14代目蔵主

先代である実父の急逝を受け、奈良で300年以上続く家業の蔵元を28歳で継承。飲食業や宿泊業など多方面に分散していた事業を大胆に整理し、本業である酒づくりに専念することで経営の立て直しに成功する。自社の代表ブランド「みむろ杉」には「三輪を飲む」というコンセプトを打ち出し、地元・三輪山の伏流水や契約農家の米を用いることで、日本酒の原点である産地の風土を尊重した酒づくりを体現した。一方で、伝統的な杜氏制度を採用せず、志を共にする若手蔵人たちと結成したチームで全国新酒鑑評会の金賞を重ねるなど、品質でも高評価を獲得。

今年4月には、縁深い大神神社(おおみわじんじゃ)の参道に宮大工の技巧を凝らした新蔵を開設し、木桶による仕込みの様子を一般公開するなど、酒づくりを間近に感じられる場を提供。地元への観光客の誘致にも貢献し、日本酒文化の継承と発信をになう存在感を示している。
圧巻のバーチャルヒューマンで世界を牽引するトップランナー
守屋貴行|Aww 代表取締役

SNSの台頭を肌で感じ「メディア転換期にあったtoCビジネスをやらねば生き残れない」と直感した守屋は、映像プロデューサーとしてキャリアをスタートさせてから、ファッション、広告、アプリなど戦略的に活動領域を広げてきた。
Aww(アウ)を設立し、アジア初のバーチャルヒューマン「imma」を開発したのは2018年。ピンクのボブヘアがトレードマークのimmaは、実在の人物と見まがうほどの自然な佇まいで人々を驚かせ、数々の有名ブランドキャンペーンに起用された。今年は大阪・関西万博開会式の司会進行という大役も務め、国際的IPとして躍進している。
近年は銀行や不動産など異業種の企業からもバーチャルヒューマンをサービスに導入したいという相談が増え、人との自然な会話を可能にした対話型AIエージェントもリリース。immaに続くバーチャルヒューマン「MIRAI」のプロジェクトは、トークン発行で20億円の調達に成功した。目標額の4倍超という結果から期待値の高さを確信する一方、日本のエンタメ業界がかかえる課題を痛感することも。「日本の課題は、素晴らしいカルチャーをつくる作家や監督の数に対して、それをビジネスに変換できるプロデューサーが足りていないこと。ビジネス側にいる人がもっとカルチャーを理解する必要があるし、カルチャー側の人がもっとオープンになるべきだとも思います。また、例えば映画なら、アメリカは興行、ヨーロッパは芸術というふうに、海外では作品における優先事項が明確にされているなか、日本はスタンスが曖昧でビジネスのタイミングを度々逃しています。そのせいで良いクリエイターが海外へ流れていってしまうのももったいない」
リアルとバーチャル、ビジネスとカルチャーを越境し続ける原動力は何か。
「人々がモニターを見つめる世界では“負”の感情にも接しやすいからこそ、心を支えるエンタメは必需品です。僕自身も人に感動や救いを与えるものをつくりたい。そのためにも日本がちゃんとIPでビジネスを継続できる仕組みを整えていきたいんです」


