文化×ビジネスを追求するカルチャープレナー、新時代の挑戦者たち

職人技と素材への審美眼で森林の資産化に挑む名匠

佐野文彦|建築家

京都の有名工務店の門をたたき、数寄屋大工の修業を積んだ。2011年に建築家として独立すると、職人経験で体得した素材へのまなざしと寸法感覚を基盤に、建築物からインテリア、インスタレーションアートでも手腕を発揮してきた。

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近年は森林の長期的価値を育てる仕組みやファンド設計にも尽力している。

巨石を探索する様子。設計やデザインはもとより、素材の目利きにも自ら足を運ぶ建築家は数少ない。
巨石を探索する様子。設計やデザインはもとより、素材の目利きにも自ら足を運ぶ建築家は数少ない。

「木材の競りでは、同じ檜でも樹齢によって数百倍の価格差がつくこともあり、扱いも大きく異なります。目先の利益のために短いタイムスパンで現金化し続けたら、今自分が探しているような上質な大木は将来枯渇してしまう。木を長期的に育てていける環境が必要です」

樹齢50年が“若手”に類されるほど、木はリターンを得るまでに時間を要する。ゆえに大半は早期に伐採され、バイオマス燃料になるチップなど、目に触れない状態で使われる商品へと加工されていくが、佐野は木目や曲線など素材の個性を生かした空間づくりを最も得意としている。デザインを手がけたホテルや飲食店には、樹齢数百年の原木や巨大な天然石がそのままの姿で組み込まれ、素材から読み取れる時間の痕跡をも設計の一部としていることがうかがえる。

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佐野が手がけた岡山県にある日本料理店「はむら」。一本の木で天井全体を包み込んだ。
佐野が手がけた岡山県にある日本料理店「はむら」。一本の木で天井全体を包み込んだ。

「思想や技術がどんなに高尚でも、そこに経済循環が生まれなければ、継続がただの痩せ我慢になってしまう。現代に適応する方法を提案することも自分の役目だと思っています」

16年に文化庁の文化交流使に任命されて計16カ国を巡った際には、各国にある素材を用いて、茶室という「もてなしの場」を現地の人々と協働制作するなど、建築のプロセス全体に精通し国際的に活躍する佐野が取り組むエコシステムに、とりわけ海外の富裕層から高い関心が寄せられている。

「日本の森林を守るプロジェクトにかかわることは、社会貢献の意味合いのほかに、“永遠性”の一部になるようなロマンも感じてもらえているのかもしれません」

佐野がつくる「一本の木を育む環境」が、日本古来の豊かな森や里山の風景を守っていく。

オリジナル3DCGアニメで飛躍する元エンジニア起業家

青松洸司|Wrong 創業者兼CEO

京都大学の数学科で学び、ディー・エヌ・エーやマイクロソフトのエンジニアというキャリアから転じて昨年10月にオリジナル3DCGアニメーションを制作する「Studio Wrong」を設立。日本有数のクリエイターとつくる動画を毎週SNSに投稿し、そのクオリティの高さでたちまち人気を獲得した。視聴の8割を海外ファンが占め、起業1年目にして2度の資金調達にも成功するなど、グローバルな期待を寄せられている。

「Haircut」監督:梨
「Haircut」監督:梨

従来、CG技術は特殊効果のひとつとしてクライアントワークに生かされることが主だったが、発信力のあるIPの誕生に新たな勝機を見いだした。「オリジナル作品に対しては投資リスクが先行し、若い才能をバックアップする企業がほとんどいません。『少年漫画なら少年ジャンプに、3DアニメならWrongに』と思われるように、クリエイターに十分な機会や居場所を提供していきたい」。才能を支える環境づくりで新たなビジネスを切り開いている。

西の「薪火」と和の「発酵」で最速ミシュラン星を獲得

前田哲郎|料理人

26歳でスペイン・バスク地方のミシュラン一つ星店「アラメダ」に飛び込み料理人としてのキャリアをスタート。同地にある世界的名店「アサドール・エチェバリ」で薪焼き技術を磨き、副料理長を務めたのちに「Txispa(チスパ)」を開業し独立。

「薪火の魔術師」と称されるほど卓越した技術と、糀・味噌・醤油など日本の発酵技法を組み合わせた品々が評価され、開店からわずか半年でミシュラン星を獲得。異文化融合の域を超えた試みが、和食文化の新しい翻訳として注目を集めている。

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文=眞板響子

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