2025.10.27 08:55

「有名観光地を避ける」新潮流、地方都市ブームが示す旅行市場の逆説的価値観

Getty Images

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有名観光地を避け、地方都市を選ぶ旅行者が増えているようだ。

旅行アプリのスカイスキャナーが発表した「2026年トレンドの国内旅行先」で検索数の増加率が高かったのは、東京や京都、大阪といった定番ではなく、石川県の輪島、北海道の旭川や紋別、沖縄の宮古島といった地方都市が上位を占めた。

この傾向は日本人旅行者だけに見られるものではない。訪日外国人旅行者の検索データを見ても、地方都市への関心が急上昇している。

次にブレイクする国内旅行先

今回の調査は、スカイスキャナーの検索データ数万件以上を分析し、前年比での検索増加率に注目したものだ。絶対的な人気度ではなく「増加率」に焦点を当てることで、「これから注目される場所」を浮き彫りにしている。

日本人旅行者による国内旅行先のトップ10は以下の通りだ。輪島(石川県)が83%増で1位、宮古島(沖縄県)が69%増で2位、紋別(北海道)が66%増で3位となった。

以下、中標津(北海道)が61%増で4位、富山(富山県)と静岡(静岡県)が同率5位で57%増、高松(香川県)、岡山(岡山県)、稚内(北海道)、米子(鳥取県)が同率7位で55%増という結果になった。

上位を占めるのは、自然や地方都市の文化的魅力を持つ場所ばかりだ。輪島は能登半島の美しい自然と輪島塗や朝市に代表される豊かな文化で知られ、復興への歩みを進める現地を訪れる旅が注目されている。紋別、中標津、稚内といった北海道の都市は、手つかずの自然と雄大な景観に魅力を感じる旅行者が多いと思われる。

訪日客もディープな日本を求めている

一方、海外からの旅行者も同様の傾向を示している。韓国からの旭川への検索が476%増、フランスからの宮古島が257%増、イギリスからの高知が206%増、スイスからの沖縄が199%増と、地方都市への関心が急上昇している。

旭川は2024年12月に韓国からの直行便が就航し、アクセスが向上した。宮古島はフランスの旅行者の間でトレンドになっている。高知はイギリスからの検索が増加し、沖縄はスイスやドイツからの関心が高まっている。

有名観光地より自分だけの体験を

調査では、この動きを、有名な観光名所を巡る旅から個人的に意味のある体験を求める旅への価値観の変化と分析している。さらに、旅行者が求めているのはリラックスとユニークな体験だと指摘。都会の喧騒を離れ、美しい自然に触れたり、その土地ならではの文化を体験したりする、よりパーソナルな旅が求められているわけだ。

その背景にあるのは、まだ多くの人が訪れていない場所だからこそ価値があるという逆説的な価値観だ。知られていないことが、かえって魅力になる。そして、これは地方都市にとって大きなチャンスでもある。旅行者は自分だけの体験を得られ、地方都市は新たな魅力を発信できることは、双方にとって意味のある変化と言えるだろう。

【調査概要】
調査対象:スカイスキャナーの検索データ
集計期間:2024年6月1日~2025年5月30日

プレスリリース

文=池田美樹

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