「シスターフッド」の理念を掲げ、産官学の連携で女性活躍を支援する一般社団法人「Toget-HER」は、2025年7月10日、11日の2日間にわたり、大阪・関西万博会場で特別イベント「女性の活躍が未来を切り拓く! Toget-HER」を開催。ビジネスや政治、教育など、国内外のさまざま分野で活躍する女性リーダーたちが登壇し、女性のエンパワーメントと社会課題の解決について語り合った。
「多極型日本」へ━━ 中心的役割を担えるのは女性
「女性がひらく地域と世界の可能性〜若者・女性に選ばれる地方に向けて〜」をテーマに掲げたDay1では、前外務大臣の上川陽子衆議院議員が基調講演に登場。今年、アンゲラ・メルケル前独首相やヒラリー・クリントン氏ら世界の女性リーダーたちと、女性活躍について、また、安全保障と平和構築プロセスへの女性参画を促す国連安保理決議「WPS(Women, Peace and Security)」の取り組みについて、意見交換したことを語った。
そして、世界から日本女性に大きな期待が寄せられていること、社会課題の解決に向けて地域や国、世界を引っ張っていくためには、女性たちが迷わず国境を超えてつながっていけるネットワーク構築の重要性を訴えた。
さらに上川氏は、北九州市水道局がカンボジアで上下水道の整備事業を行なった事例を紹介。地域が技術や文化などの資源を生かし、国を越えて主体的に広域外交を推進する必要性を述べ、国内約1700の自治体それぞれが外交の担い手となる、「多極型日本」の理念を語った。その上で「地域の広域連携を促進するためには、コミュニティは従来のあり方から転換する必要がある。そこでは女性が中心的な役割を担える」との考えを示した。
寄り添う姿勢で人づくり支援、世界で活躍する女性起業家たち
続く特別セッション「社会課題を解決する女性起業家たち」では、中南米、アフリカのブルキナファソ、タンザニアで活躍する3名の女性リーダーがオンラインで参加。犯罪や紛争、貧困に関する課題解決に挑む活動を報告した。
「世界の悲しい経験を減らす」をビジョンに掲げ、中南米を中心に、AIを活用した犯罪予測システム「クライムナビ」を提供するシンギュラー・パータベーションズ代表の梶田真実氏は、同システムによりブラジル南東部の州で犯罪発生件数を68%減少させた実績を紹介。アメリカ大陸での警察官殉職率が高いことに触れ、各地で警察や公安と連携を図りながら、テクノロジーで「無人警備の世界」を実現する展望を語った。
西アフリカのブルキナファソで、化粧品などに使われるシアバターの製造・販売事業を展開するボーダレス ブルキナファソ代表の原口瑛子氏は、同国でテロなどの暴力によって女性が雇用機会を奪われている現状を説明した。原口氏は、現地の女性たちが資金をもっていなくても、その土地の資源を活用し、持続的に経済的自立ができるように支援したいと、2022年に同社を創業。化粧品の原料では難しいとされる高いトレーサビリティを実現し、現在では日本国内外で70店以上を展開するヘアサロンやコスメブランドを取引先に持つようになった成果を示した。
さらに、東アフリカにあるボーダレス タンザニア代表の菊池モアナ氏は、現地では15~19歳の女の子の3~4人に1人が望まない妊娠で退学させられ、それがきっかけで貧困に陥っていることや、生理用ナプキンを購入できず劣悪な衛生環境に晒されている状況を報告。そうした中、同社では彼女たちが働き、安定収入を得られるように生理用ナプキン「UHURU(ウフル:スワヒリ語で自由の意味)」の製造工場を経営するほか、利益の一部をナプキンの寄付や性教育にあてる仕組みを構築していると話した。



