貧困や暴力に苦しむ途上国の人々の手を取り、人々が自らの力で社会的・経済的発展を達成できるようにサポートする「人づくり」の支援。それは長い間、日本がODA(政府開発援助)などを通じて強みとしてきたものであり、紛争や環境破壊などの広がりを背景に、今後ますます求められていくはずだ。3名の活動は、そうした中で女性がどのようにリーダーシップをとり、男性にない視点を生かして課題解決を実現していくのか、モデルケースになり得る。
ライバルが協働し、瀬戸内を「日本の実験場」に
パネルディスカッション「地方の人材流出は食い止められるのか?〜連帯が地域を変える〜」では、地方から若者や女性が流出している課題を共有。瀬戸内地域での取り組みと課題解決の展望について語り合った。
中国銀行を傘下にもつちゅうぎんフィナンシャルグループ執行役員の坂口有美子氏は、岡山県内の女性の企業経営者、起業家、大学関係者らによる任意団体「WePro(Women’s Empowerment Project in Okayama)」の活動を紹介。多様な人財活躍推進や少子高齢化社会への対応などを通して、産官学民で連携して女性が自分らしく豊かな働き方、生き方を追求できる仕組みづくりを取り上げ、シスターフッドの文化を岡山に普及させる志を示した。
広島銀行を中核とするひろぎんホールディングス執行役員の木下麻子氏は、中国電力、マツダ、広島県との連携プロジェクト「HATAful」について説明。広島県が人口転出超過数で全国ワースト1位の現状を踏まえ、県内に魅力的な働く場所を増やし、人材交流を活性化するという同プロジェクトのミッションについて述べた。また「企業での女性活躍は、家庭での男性活躍と表裏の関係にある」として、男性活躍を後押しする条例づくりにも触れ、会場の関心を誘った。
さらに、岡山県でジェンダー平等の啓発活動に取り組む横山浩花氏は、「地方ならではの固定観念やジェンダーバイアスがある」と問題を提起。若者や女性が安心して自分の考えを発信できる場としての「セーフスペース」創出を訴えた。横山氏は、2024年に国連本部で行われた第68回女性の地位委員会(CSW68)にユース派遣者として参加。その経験から、若者世代の女性の意見を社会的な意思決定に反映させるべく、CSW日本ユース協議会を共同で設立。全国、そして世界へ連携を広げるボトムアップ型の構想を披露した。
ちゅうぎんの坂口氏は「中国銀行と広島銀行はいわばライバル関係だが、銀行の圧倒的な信頼と情報を互いに持ち寄り、地域課題を解決していかなければならない」と発言。それを受けてひろぎんの木下氏は、地方だからこそ可能となる施策実行のスピード感と企画力があるとし、「瀬戸内地域が日本の実験場になり、どれだけそれを横に広げていけるかが全て」とさらなる連携を呼びかけた。


