経営・戦略

2025.10.28 12:00

「バランスよくハッピー」企業価値を高めAI時代を勝ち抜く戦略(横河電機 重野邦正)

重野邦正|横河電機取締役 代表執行役社長

重野邦正|横河電機取締役 代表執行役社長

2025年10月25日発売のForbes JAPAN12月号第一特集は、「新いい会社ランキング2025」特集。上場企業を対象にした毎年恒例の大企業特集では、今年は「ステークホルダー資本主義ランキング」と、新たに「ESGフィット度ランキング」の2つを掲載している。ステークホルダー資本主義ランキングは、「地球(自然資本)」「従業員」「サプライヤー・地域」「株主」「顧客・消費者」の5つのカテゴリーで解析。ESGフィット度ランキングでは、サステナビリティ情報開示の義務化が進むなか、ESGの取り組みを自社の「稼ぐ力」につなげている企業を導き出した。同号では2つのランキング、IPOランキング上位の11企業の経営者インタビューを一挙掲載している。

2024年版に続き、今年も「ステークホルダー資本主義ランキング」上位を射止めた横河電機。プラント自動化に貢献してきた実績を強みに、AI時代の自律型ソリューション開発に挑む。


「みんなをハッピーにする会社にしたい。それが私の目指すエクセレントカンパニーです」

2025年4月1日に社長に就任した重野邦正は、社員への挨拶の席でこう宣言した。「ハッピー」とはどのような意味か。そう問うと、次のように解説してくれた。

「企業価値を高めるには、利益を出すだけではダメ。株主やお客様、それから社員やパートナー、さらに地域社会。それぞれが描くハッピーは異なりますが、みなさんにバランスよくハッピーになってもらってこそ企業価値は上がる」

経済的利益を追求すると同時に、関係者やその先にある社会を幸せに導く──。

実践は容易ではないが、重野は業種とテクノロジー、ふたつの観点から具体的な取り組みを教えてくれた。

業種の観点で注力しているのがエナジートランジションだ。横河電機はオイル&ガスや化学などのプラントのプロセス制御システムで成長した会社であり、その領域では世界「ビッグ6」の一角を占める。ただ、気候変動の問題に貢献するには、既存のビジネスの枠を超え、再生可能エネルギーや水素、アンモニアなどのクリーンエネルギーへの移行にも挑む必要がある。

「その一手として、24年度に再生可能エネルギーの開発・監視ソリューションを提供するドイツのBaxEnergyを買収しました。世界のエネルギー会社はグローバルで複数の種類の再生可能エネルギー発電設備をもっています。それらを効率的に運用するソリューションを提供します」

横河電機はこれまでにも数々のM&A(企業の合併・買収)で仲間を増やしてきた。ただ、今回は従来と戦略が異なる。

「従来は、現場からのボトムアップ型の提案をもとにスタートアップや研究開発段階の事業を買収することがほとんどでした。しかし、ビジネスの実績が少ないものは事業化までに時間がかかってしまう。その反省から、約1年前から社長直下のチームで、すでに事業基盤のある中規模以上の案件を中心に進める方針に転換しました。求めているのは、私たちの成長戦略の延長線上にあり、足りないピースを埋めてくれる事業です」

一方、テクノロジー面ではAI(人工知能)ソリューションに力を入れる。さまざまな業種で人手不足や技術伝承が課題になっており、もはやAIの活用は現場でも必須だ。ただ、単純にAIを導入すればいいわけではない。

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文=瀬戸久美子 写真=ヤン・ブース

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