経営・戦略

2025.10.28 12:00

「バランスよくハッピー」企業価値を高めAI時代を勝ち抜く戦略(横河電機 重野邦正)

重野邦正|横河電機取締役 代表執行役社長

「プラント制御では爆発性ガスや有害ガス、高温・高圧の流体を取り扱うので危険と隣り合わせです。プラントにAIを適用するには、安全とセットであることが絶対条件。その点、私たちはプラント運用の知見が豊富で、ほかのAIベンダーにはまねできない強みをもっています。プラントの自動化に貢献してきたからこそ、AIを活用した自律化の役に立てる」

advertisement

横河電機はこれら社会貢献度の高い事業を推進することで、24〜28年度の5年平均で受注高・売上高ともに年10%以上の成長を目指す。決して低いハードルではないが、「A commitment made is a commitment kept」(約束したことは最後まで完遂する)を座右の銘にする重野だけに、是が非でも達成したいところだ。

有言実行し、バリューを示す

重野が有言実行にこだわるのは、中東でもまれてきた経験が影響している。重野は07年から計14年、オイルの中心地である中東でビジネスの最前線にいた。

「競合は主にアメリカ企業。当たり前ですが彼らは英語が上手で、プレゼンも巧み。おまけにスタイルもいい。第一印象では勝てないわけです。選ばれるためには、どんな困難にも逃げずに有言実行し、信頼を積み重ねていくしかなかった」

advertisement

実際、中東ビジネスは苦難の連続だった。外国企業が現地でビジネスをする際には、ローカル人材を一定割合以上雇うなどの条件を求められるケースがある。サウジのプロジェクトでは最初にディプロマ(職業専門学校卒)100人以上をエンジニアとして雇用した。だが、しばらくすると全員が辞めてしまった。

「政府が大学進学の補助を始めた途端、みんな給料の高いディグリー(大学卒)を目指して進学してしまったのです。世界にはさまざまなキャリア観があることを思い知りました」

価値観の違いに打ちのめされるなかで学んだことがある。顧客視点の大切さだ。「宗教や習慣が違う人たちをひとつのやり方に押し込めるのは無理。ただ、『お客様視点でどうなの?』という問いかけだけは、どんな人にも響いた。お客様に寄り添うという商売の原則は万国共通。それを軸にマネジメントをするとうまく回り始めました」

その後はサウジで女性エンジニア約50人のチームを立ち上げるなど、現地の女性の社会進出にも貢献した。諦めることなくビジネスを育てあげた実行力が、まさに重野の武器である。

一方で、社長就任後は「Show the value」を打ち出している。

「自分たちの価値を相手にしっかり伝えないといけない。私たちも含めて、日本企業はそこに伸びしろがある」

コミットしてやり遂げたことを、これから世界にどうアピールしていくのか。有言実行の男の発信力に注目したい。


重野邦正◎岡山県生まれ。九州工業大学を卒業後、1991年に横河電機に入社。2021年ヨコガワ・ミドルイースト&アフリカ社長、23年執行役員中東・アフリカ統括代表兼務、24年常務執行役員デジタルソリューション統括本部長を経て25年4月から現職。

横河電機◎1915年創立。YOKOGAWAグループ会社とともに、計測、制御、情報の技術を軸に最先端の製品やソリューションを提供。62カ国に拠点を構え、従業員数は連結で1万7000人を超える。

文=瀬戸久美子 写真=ヤン・ブース

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事