国内

2025.10.27 13:30

新キーワード「ソーシャルR&D」NPO座談会で語られた社会の未来とは

(写真左から)村田早耶香・杉之原明子・斎藤祐馬・佐俣アンリ・小沼大地

小沼:みんなのコードは教科書的な成功事例のひとつです。多くのNPO団体が、現場での実践と調査・研究を実施しています。R&Dとも言えるこうした実証を通した定量的なデータを出し政策提言することは、NPOの価値として重要です。一方、最近ではプログラミング教育領域には、企業やスタートアップの参入もあるかと思いますが、その違いをどう認識していますか。

advertisement
すぎのはら・あきこ◎みんなのコード代表理事。2008年にガイアックス入社後、14年アディッシュ設立および取締役に就任。20年東証マザーズ上場。21年にみんなのコードCOOに就任。25年より現職。
すぎのはら・あきこ◎みんなのコード代表理事。2008年にガイアックス入社後、14年アディッシュ設立および取締役に就任。20年東証マザーズ上場。21年にみんなのコードCOOに就任。25年より現職。

株式会社とは異なるR&Dの可能性

杉之原:みんなのコードは従来、小学校から始まって、学校の先生が教室で使えるオンライン教材を無償で提供することで、昨年度は約60万人の小学生が教材を使うというインパクトにつながっています。中学校、高校も同じように教材を無償提供しているのですが、市場があるため、競合には株式会社もいます。このことから、「株式会社の手が及ばないところ」はどこだという議論をするようになりました。私たちは、マイノリティの課題にも投資をしているのですが、これは株式会社にはできない。なぜなら、今すぐ儲からないからです。だから、この領域を深く潜ることで、株式会社とはまた違う「みんな」に届けられるような、私たちだけの2030年代の教材がつくれるんじゃないかなと。

佐俣アンリ(以下、佐俣ベンチャーキャピタルの代表パートナーをやりながら、非営利セクターや新公益連盟の支援を行っていることもあり、とても興味深く話を聞きました。その考えの根底には、株式会社的なメカニズムでは触れられない領域を補完する存在がNPOであるという感覚がありますか。

杉之原:ありますね。特に、情報教育においては、才能がある人たちや家庭の資本があるところにはヒト・モノ・カネが集まる構造で、反対に、例えば、過疎地などではプログラミング教室がないなど、明らかにリソースが不足している。現在、学習指導要領改訂に向けて動いていますが、変革が起きるときは、ビジネスチャンスでもあり、株式会社が参入する機会を自らでつくっているとも言えます。ただ、私はこの撤退戦とも言える状態が喜びでもある。なぜなら、株式会社の世界ではなかなか見えない領域に行けるから。よりリソースや機会が足りない課題に気づきに行くことが使命だと感じています。

advertisement

佐俣:極めて本質的なNPO論だと思います。株式会社、スタートアップが何であり、そのうえでNPOは何であるのかが、すごくわかりやすい。それを上場企業の取締役経験者が話すことは有意義です。斎藤さんはどう見ていますか。

斎藤祐馬(以下、斎藤私はデロイト トーマツベンチャーサポートで社長を務め、経済同友会で非営利セクターとの協働にも取り組んでいます。スタートアップは「社会を変える」ことをベースに発信をしていますが、現実的には稼げる市場で事業を行わないとつまずくことが多い。一方、NPOはピュアに社会的リターンを追えるのがいちばんの強み。解決できる課題の範囲がすごく広いし、感性で解決しようという課題にストレートに取り組めるのが大きな違いだと思います。

佐俣:スタートアップの定義は「年30パーセント、永続的に成長するということを軸に大量のお金と人を集めてよい」というもの。このルールにのっとったなかで解決していけるものしか解決できないし、これで解決できる社会課題は「非常にナローである」というのが私の意見です。その代わり、このナローのなかに引っかけられれば、すさまじいスピードで解決できるというのが、スタートアップでもあります。

さいとう・ゆうま◎デロイト トーマツ ベンチャーサポート代表取締役社長。2010年トーマツ ベンチャーサポート(現デロイトトーマツ ベンチャーサポート)の事業立ち上げに参画。19年より現職。公認会計士。
さいとう・ゆうま◎デロイト トーマツ ベンチャーサポート代表取締役社長。2010年トーマツ ベンチャーサポート(現デロイトトーマツ ベンチャーサポート)の事業立ち上げに参画。19年より現職。公認会計士。
次ページ > 「エンドゲーム」の拡張可能性

文=山本智之 写真=平岩亨

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事