経営・戦略

2025.10.26 12:00

米レストランチェーン「フーターズ」復活を目指す、70代創業者たちの大変革

Photo by Kevin Carter/Getty Images

激戦区のチキンウィング市場、再起への課題

経営不振に陥った店舗を立て直すためには、今や激戦区となったチキンウイング市場で再び存在感を示す必要がある。全米のこの分野には、店舗数1300以上・売上高40億ドル(約6080億円)の「バッファロー・ワイルド・ウイングス」や、2200店舗以上・42億ドル(約6384億円)の「ウイングストップ」、約1000店舗・26億ドル(約3952億円)の「ザックスビーズ」といった大手チェーンがひしめいている。さらに、各地に地域密着型の専門店が数多く存在し、ドミノ・ピザ、パパ・ジョンズ、ピザハットなど大手ピザチェーンも次々とメニューにウイングを加えている。

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それでもキーファー、ディジャナントニオ、ドロースト、ジョンソンの4人は、「オリジナルのフーターズのやり方」にまだ勝機があると信じている。彼らは、全米各地に再び“街のたまり場”として店を復活させることを目指している。「顧客の忠誠心がこんなに強いとは思っていなかった」とジョンソンは語る。「自分たちが育ててきたものに、正直驚かされている」。

再建の第1歩は、老朽化対策と「創業時のメニュー」復活

キーファーがまず取り組むのは、店舗の中で衛生や安全面に問題を抱えている場所の見極めだ。「多くの店は物理的に老朽化している」と彼は言う。そのうえでスタッフの再教育を進め、メニューを創業当時の内容に戻すことに注力する。売上の4分の3以上はドリンクではなく料理によるものであり、メニューの簡素化と品質向上が鍵になるという。

創業当初のメニューには保存料が使われておらず、チキンウイングは冷凍ではない生のもので、ソースもすべて手作りだった。キーファーは今後の改革をこう表現する。「本来フーターズがどうあるべきだったかを、アメリカ中にもう1度見せるつもりだ」。

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「地域のレストラン」こそが本来のフーターズ

ディジャナントニオは、かつての出来事を引き合いに出しながら、「本来のフーターズ」についての考えを説明する。何年も前、彼の子どもたちが通っていた地元のカトリック校には、修道女の校長がいたという。ある日、その校長から寄付をお願いされたディジャナントニオは、「小切手はレストランで渡せるよう準備してあります」と答えた。校長は向かいのオフィスに取りに来たが、彼は譲らなかった。「小切手はフーターズにありますよ」と。すると校長は「私はこの店に入ることができません」と言ったという。そこで彼は、「では一緒に行きましょう」と提案した。

2人で店に入ると、そこには野球を終えた子どもたちのグループや買い物帰りの女性たち、昼休みの弁護士たちがテーブルを囲んでいた。修道女である校長は、店の雰囲気が想像していたよりもずっと健全で、家族連れにも開かれたものだったことに驚いたという。「なるほど、“地域のレストラン”というのはこういうことなのですね」と彼女は言った。

創業メンバーが挑む人生最大の変革

「私たちは、経営がこれ以上悪化しないようにする必要がある。月曜に引き継いだからといって、火曜にすべてがうまくいくわけではない」とキーファーは語る。彼によれば、創業メンバーたちは今後数年間、経営から一切の報酬や配当を受け取らず、店舗で生まれた利益をすべて再投資に回す方針だという。「その資金は、物件の再投資に充てるつもりだ」。

キーファーと創業者たちは、人生最大の変革に挑もうとしている。「私たちはいつかみんな死ぬ。その前に、この店を次の世代につなげたい」とキーファーは語った。

(forbes.com原文)

翻訳=上田裕資

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