「フーターズ」は、フロリダ州で暮らす男たちが「自分たちが出入り禁止にならない店を作ろう」という思いつきから1980年代に立ち上げた、レストランチェーンだ。今や70代になった創業者たちは、オレンジ色のホットパンツを着たウェイトレスとチキンウィングで知られるブランドの再生を掲げて、苦境にある事業を買い戻そうとしている。
フーターズ創業メンバー、破産寸前のチェーン救済へ
ニール・キーファー(73)は、フーターズの創業メンバーによる事業体「オリジナル・フーターズ・ファウンダーズ・グループ」のCEOを務めている。キーファーは昨年の冬、フロリダ発祥の同チェーンのフランチャイズ事業者の「フーターズ・オブ・アメリカ」が破産寸前だという知らせを耳にした。彼はすぐに、長年親交のある存命中の3人の共同創業者に電話をかけ、今後の対応を話し合った。
キーファーによれば、創業者グループが運営するフロリダとシカゴの22店舗は、1店舗あたりの年商が470万ドル(約7億1000万円。1ドル=152円換算)に達していたのに対し、フーターズ・オブ・アメリカが運営する150店舗の平均売上は、その半分以下の230万ドル(約3億5000万円)だった。キーファーはこれらの店を立て直せると確信し、大胆な提案を持ちかけた。「このまま今のエリアだけで現状維持することもできる。でも、もっと大きなリスクを取って勝負することもできる」。
創業メンバーのギル・ディジャナントニオ(77)、エドワード・ドロースト(74)、デニス・ジョンソン(74)は、「やろう」と即答した。「また店を開くなんて、正直、頭が痛くなる話だ」とドローストはフォーブスに語る。「でも、この店はずっと“アメリカのご近所のオアシス”であり続けてきた。だからこそ今、アメリカにはこの店が必要なんだ」。
キーファーと創業メンバーたちは、本来であればフロリダのゴルフ場やビーチで悠々自適の老後を過ごしていてもおかしくない年齢だ。だが彼らは現在、破産手続きを経て売却される111店舗の買収を主導し、約4000万ドル(約60億8000万円)を投じて経営不振に陥ったチェーンの再建に乗り出している。
キーファーは、1983年にフロリダ州クリアウォーターでフーターズが創業された当時、共同創業者たちの弁護士を務めていた人物だ。「私たちはこのチェーンに強い思い入れがある。ブランドが消えていくのを見たくない。道義的な責任も感じている」と彼は語る。



