世界初の「命の経済国」へ
──そうした価値観を社会や企業のなかで浸透させるには、どうしたらいいと思いますか。
アタリ:国、企業、銀行が世界観を共有する必要があります。「世界はもろく、我々自身が破壊している。そのため、守る条件をつくらなければならない」という認識です。日本は島国であり、文化が比較的均質なので、そうした世界観の共有がしやすい条件が整っています。日本が世界初の「命の経済国」になることも可能です。私は日本にそういう未来があるとみています。
──なぜ、日本なのでしょうか。
アタリ:日本は、長期的な視点の重要性を理解しています。外部依存を減らそうとしており、再生可能エネルギーに巨額の投資を行っています。日本においては、神道的伝統などに根ざした文化が、その長期的な発想を支えていると私は考えています。人口動態に課題はあるものの「命の経済」へと向かっているように見えます。
──少子高齢化による人口減少は深刻です。これは「命の経済」の拡大を進めていく上で障害になりませんか。
アタリ:確かに大きな問題です。ただ、日本が最終的な衰退に向かうのか、それとも1億人規模で安定し、再び出生率を回復させるのか。私は後者を望んでいます。日本には文化的アイデンティティや高い倫理観があり、神経科学、バイオテクノロジー、再生可能エネルギー、健康的な農業、漁業といった分野で大きな強みをもっています。だからこそ、日本は「命の経済」の模範国になれると信じています。
ジャック・アタリ◎フランスの思想家、経済学者。1943年、アルジェリア生まれ。フランス国立行政学院(ENA)卒業、81年、フランソワ・ミッテラン大統領顧問。91年、欧州復興開発銀行初代総裁。2016年の米大統領選でトランプ大統領の誕生を予言した。『2030年 ジャック・アタリの未来予測』『世界の取扱説明書』(ともにプレジデント社)など、著書多数。


