経営・戦略

2025.10.27 08:30

ジャック・アタリ独占インタビュー、日本は世界初の「命の経済国」になれる

ジャック・アタリ|思想家、経済学者

利己主義は自滅する

──第2次トランプ政権が、反DEI(多様性・公平性・包括性)の姿勢を打ち出したことから、いわゆる「バックラッシュ」が世界で広がっています。ステークホルダー資本主義やESG経営など持続的な成長や戦略的な多様性を推進してきた企業にとっても、逆風になるのではと危惧しています。

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アタリ:利己主義は自滅します。だからこそ、「合理的利他主義」と「命の経済」の重要性を強く訴える言説が必要なのです。それだけでなく、政治的プログラムとして具体化することも不可欠です。「命の経済」を、将来的には80%にまで拡大するためには、若い世代を巻き込み、破壊的な産業ではなく、「命の経済」を支える分野に価値を見いだせるような教育をしていく必要があります。

教育は「命の経済」に対する意識を育てるうえで不可欠です。食事、農業、環境、廃棄物管理、消費行動において、人々の行動を変える教育が求められます。

親や学校は「死の経済」に属する消費が子どもたちの未来を壊すことを教えなければなりません。例えば、「所有するよりレンタルのほうが良い」「健康的な食事は砂糖漬けの食事より良い」「麻薬は破壊的である」「ある種のビデオゲームは有害だ」と教えるべきです。そして音楽、絵画、執筆といった芸術的創造を培うべきです。スマートフォンに依存するより、創造的活動のほうが、はるかに価値があることを教えるべきです。

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また、税制や規制の抜本的改革により、「命の経済」がより収益性の高いものになるようにしなければなりません。残念ながら現在は「死の経済」の方が「命の経済」よりも利益率が高いのです。だから「命の経済」は公共部門が中心となっています。

銀行や投資家は「死の経済」に資金を投じるべきではありません。労働者は「死の経済」の企業に圧力をかけ、消費者は有害な製品を選択から外すべきです。市民は「死の経済」を支持する政党に投票すべきではありません。これは全面的で持続的な行動なのです。政党は「命の経済の党」となり、銀行は「命の経済の銀行」となるべきです。

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インタビュー=浦田 薫 文=中居広起 イラストレーション=エフゲニー・バルフェノフ

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