2025年10月25日発売のForbes JAPAN12月号第一特集は、「新いい会社ランキング2025」特集。上場企業を対象にした毎年恒例の大企業特集では、今年は「ステークホルダー資本主義ランキング」と、新たに「ESGフィット度ランキング」の2つを掲載している。ステークホルダー資本主義ランキングは、「地球(自然資本)」「従業員」「サプライヤー・地域」「株主」「顧客・消費者」の5つのカテゴリーで解析。ESGフィット度ランキングでは、サステナビリティ情報開示の義務化が進むなか、ESGの取り組みを自社の「稼ぐ力」につなげている企業を導き出した。同号では2つのランキング、IPOランキング上位の11企業の経営者インタビューを一挙掲載している。
激変する世界経済を生き抜く、大企業の処方箋となるのか。知の巨人、ジャック・アタリが独占インタビューで語った、将来世代に利益をもたらす生産活動「命の経済」とは。
将来世代の利益を考えることが自らに利益をもたらす──。
フランスの思想家、経済学者で「欧州最高峰の知性」と称されるジャック・アタリは、この考え方を「合理的利他主義」と呼ぶ。
ステークホルダー資本主義やESG経営も、持続的な成長や戦略的な利他を重視する点で、経営の「合理的利他主義」と言えるかもしれない。
しかし、トランプ政権が反DEI(多様性・公平性・包括性)の姿勢を打ち出したことなどをきっかけに、いわゆる「バックラッシュ」が世界で広がり、ステ
ークホルダー資本主義やESG経営への逆風も懸念される。
混迷の時代に、企業はどこへ向かうべきなのか。この問いに対し、アタリは「利己主義は自滅する」と断じ、「合理的利他主義」とともに、将来世代に利益をもたらす生産活動「命の経済」の重要性を説く。
アタリへの独占インタビューで、激変する世界経済を生き抜くための大企業の行動指針と、日本に託す未来への提言をお届けする。
──あなたはかねて、「合理的利他主義」を提唱しています。現代において、なぜこの考え方が必要なのでしょうか。
ジャック・アタリ(以下、アタリ):利他であることは他人のためになるだけでなく、自分自身にも利益をもたらします。「合理的利他主義」の原則を社会制度に組み込む国は、「ポジティブな社会」をつくり出すことができます。特に私たちは、未来の世代のことを考える必要があります。それは彼らの存在を可能にする条件を整えることであり、同時に私たち自身の未来を守ることにもつながります。
個人、組織、国は、自分たちの行動が将来世代ならびに生きとし生けるものの利益に反していないかを、できる限り事前に確認しなければなりません。例えば、私たちの行動が気候変動を加速させたり、海洋の生化学バランスを乱したりしないか、見極める必要があります。彼らが暮らしやすい地球・社会を築くことができれば、私たちが年をとったときに、彼らが支えてくれるでしょう。「合理的利他主義」とは、未来を見据え、次の世代を思いやる姿勢なのです。



