宇宙

2025.10.24 10:30

スペースX、1トン150億円の月輸送料発表 NASA月着陸計画で契約解除の可能性

(c)SpaceX

10月13日に実施された11回目の飛行テスト(IFT 11)は好調な結果に終わり、次回テスト(IFT 12)からは、機体とエンジンが大幅に刷新された新仕様「スターシップV3」へと移行するが、その性能は未知数といえ、エンジン推力、機体質量、ペイロード(積載量)能力、ボイルオフの程度などによって補給回数は変化する。ただし、想定どおりのスペックが発揮されれば、NASAの予想より少ない10数回の補給に収まる可能性がある。12回目の飛行テストは早ければ2025年中に実施される。

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スターシップHLSのハッチは機体上部にあるため、月地表へは降下用エレベーターを使用する (c)SpaceX
スターシップHLSのハッチは機体上部にあるため、月地表へは降下用エレベーターを使用する (c)SpaceX

これと並行して、スペースXは有人月着陸機としての開発・検証にも着手しており、そこにはECLSS(環境制御生命維持システム)、操作ディスプレイ、着陸脚、月面への降下用エレベーター、着陸ソフトウェアなどが含まれ、テストクルーによる月面着陸時の機体操作も模索されているという。V3の飛行テストが順調に進めば、スターシップHLSの軌道上での長期テストと、Depotとタンカーによる軌道上補給のテストが、2026年中に連続的に行われる。その打ち上げにはスペースXの私設射場「スターベース」(テキサス州)のほかに、ケネディ宇宙センター(フロリダ州)の射場「LC-39A」に建設中の専用発射台も使用される可能性がある。

月と火星への輸送料、1トン150億円

今回のレポートに先立って10月11日、スターシップによる輸送サービスの詳細も初めて明らかにされた。それによると月への物資輸送サービスは2028年、火星へは2030年に開始され、輸送料金はどちらも1トン当たり1億ドル(約150億円)。1kgに換算すると10万ドル(約1500万円)になる。従来の政府系の火星ミッションが1kg当たり20万ドル(約3000万円)といわれ、また、近年の民間企業による月面輸送サービスが約60万ドル(約9000万円)から170万ドル(約2億5500万円)であることを考えれば格安といえる。

月への輸送サービスは、アルテミス3の翌年から開始されることになる。また、スペースXは2026年から約2年おきに火星探査を行う予定だが、火星輸送サービスはその2回目の探査から実施されると思われる。これらのプランはスターシップV3のテストが順調に進むことを前提としているが、輸送サービスの開始、または2027年のアルテミス3までに、残された課題はあまりにも多い。スターシップHLSの開発が当初予定からすでに3年遅れていることなどから、アルテミス3には間に合わず、さらに遅延すると考える関係者は多い。そこにはダフィー氏と米政府が含まれる。

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編集=安井克至

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